2009年12月28日月曜日

リモートクラッチ

 フロントミッドシップレイアウトにより生まれたスペースを活用し、当方のA3はエンジンルーム内に電動ウインチを装着しています。エンジンルーム内といっても、フロントアクスルの真上にあたる位置に搭載しているため、当然そのままではクラッチの切替レバーが操作できません。

 そこで以前から、フロントグリル下で遠隔操作する方法を検討していました。ひとつの案として、1/4inのラチェットハンドル用のユニバーサルジョイントを使用し、延長したロッドを回転して操作する方法を考えていたのですが、改めてWARNのサイトを見ると、ロッドを押し引きすることで遠隔操作するタイプの「リモートクラッチ」なる製品がありました。

 実は、この「押し引き操作」タイプも以前検討したことがあるのですが、クランクを用いる構造上、クラッチレバーの回転角が180度に届きません(押し切らない/引き切らない)。本来のクラッチレバーの作動角は180度ですから、これでは角度が不足する、つまり切替が確実に行われない(中途半端となる)恐れがあると、懸念していたのです。ただ、純正品として販売されているのであれば問題はないのだろうと思い、手元にあったウインチのカットモデルを使って検証したところ、実用上問題ないことが確認できました。

 で、製品の構造を参考にし、早速製作してみることにしました。まずはウインチのレバーを根本からカットして、キャップボルトを溶接。さらにボルト断面を、位置決めのためD字型に切削した上で、A2024のフラットバーから切り出したクランクを組み合わせました。ロッドはメンバー等との干渉を避けるには何カ所も曲げざるを得ないので、剛性を確保する目的でSUS304を選択。また関節部にはリンクボール(ロッドエンド)を使用することで、遊びを最小限としてみました。

 完成まであと1歩のところで時間切れとなってしまいましたが、試しに操作してみると、問題なく動作しました。これでウインチのクラッチ操作は、フロントグリル下の「握り玉」を押し引きすることで、確実に行えるようになるでしょう。

2009年12月25日金曜日

LUG-ALLの分解

 一部で有名な、アルミ製のハンドウインチ・ラグオール。必要にして十分な引きしろと牽引能力を持ち、また比較的軽量であることから、オフロードでのリカバリーに愛用しています。

 当方は、十数年前から使用している「ノーマル機」の他に、ポリエチレンロープへと巻き替えた「ファイバーロープ仕様」の2台のラグオールを使い分けているのですが、このうち「ノーマル機」には、迅速巻き上げ用のハンドクランク(ハンドル)が備わっていませんでした。
 このハンドクランクは、引き出したロープをテンションが掛かるまで、スピーディーに巻き上げるためのもので、注文時に選択できる「メーカーオプション」なのです。

 試用してみると分かりますが、とにかく実用的なオプションであるため、「ノーマル機」にも後から追加装着しようと、必要な部品を入手していました。しかし、ハンドクランクを装着するには交換しなくてはならない、肝心要のセンターシャフトが、簡単には抜けないのです。いや、正確にはセンターシャフトの抜け防止のために打ち込まれているピンを、打ち抜くことができなかったのです。
 通常であれば、スプリングピンが使われているであろう箇所なのですが、補修部品を見てみると、いわゆる「平行ピン」の中央にセレーションを刻んだような形状となっており、分解することは想定していない構造のようです。

 ピンポンチで打っても抜けず、やむを得ずドリルで揉んでいたらキリが途中で折れてしまい、そうこうしている内にもう1台入手したこともあって、作業未完のまま使い続けて早数年…。先日ふと思い出し再度作業を試したところ、技術の向上もあってなのか、あっけなくピンをドリルで揉み取ることができました。
 部品を組み込むにあたっては、スプリングピンに置き換える予定でしたが、ちょうど良いサイズの在庫がなかったので、補修部品のピンを加工。後からピンポンチでも抜き取れるようにしましたので、清掃や注油も容易に行えることでしょう。

2009年12月23日水曜日

4BOLTと6BOLT

 A3を維持していくにあたり、使用されている部品の「流用元」を特定することは、大きな意味を持っています。例えば、ステアリングギアボックスのようなコンポーネント。これをメーカーから部品で取り寄せるとなると、新品しか選べませんが、仮に流用元を特定できれば、新品のみならずリビルド品や中古品まで選択肢が広がり、維持費の軽減へとつながるからです。

  A3のパワステギアボックスは、ローバー用を転用したものであることは把握していましたが、最近になって正確な流用元を特定するに至りました。それは、初期のディフェンダーに使用されている“6BOLT”と呼ばれるもの。この“6BOLT”とは、ステアリングギアボックスのトップカバーを固定しているボルトの本数のことで、ディスカバリー等に使用されているものは“4BOLT”といったように、区別して呼ばれています。

  この“6BOLT”と“4BOLT”タイプのステアリングギアボックス、基本的には取付互換性があるのですが、それはあくまでディフェンダーやレンジローバー、ディスカバリーに装着する場合に限ってのこと。フレームへの固定法がローバーとは異なるA3には、ステアリングギアボックスのケーシングに貫通穴が開いている“6BOLT”タイプしか、装着できないのです(写真下の“4BOLT”タイプは「止まり穴」になっているため、A3には装着不可)。

 ちなみに英国のローバー乗りの間では、容量の小さい“6BOLT”タイプのパワステギアボックスは不人気で、“4BOLT”タイプに交換するのが一般的となっているようです。そういえばランクル80系の初期モデルでも、ピットマンアームが取り付けられているセクターシャフトが「捻れる」というトラブルが多発したくらいですから、強化型に交換する必然性があるのかも知れません。
 もっとも、“6BOLT”タイプが弱いというのは、車重2tのローバーで使用した場合であって、A3で使用するには必要十分なものと思われます。

2009年12月15日火曜日

インスタントレタリング

 A3にエアロッカーを装着するにあたり、ひとひねりしたかったのがスイッチの処理。エアロッカーのキットには専用のスイッチが付属していますが、どうも「とってつけた感」が好きになれない性格でして、以前ジムニーに装着した際にも、あえてキャリイの純正デフロックスイッチを組み合わせていました。

  A3の運転席の雰囲気にマッチするよう、今回は汎用のトグルスイッチに防水ゴムキャップを組み合わせて使用することにしましたが、そのためには作動状態を表示するためのインジケーターを、別途設ける必要があります。そこで、A3のメーターパネルに備えられた、ヘッドライトやウインカーなどのインジケーターに、デフロックのインジケーターを追加して並べることにしました。
 しかしながらA3のインジケーターは、個々が独立した構造の汎用品とはいえ、デフロック用のインジケーターは用意されていません。そのため、「グロー」のインジケーターを部品で取り寄せ、表示を書き換えて使用することにしました。

 インジケーターの表示を「DIFFLOCK FRONT」と「DIFFLOCK REAR」に書き換えるために用いるのは、懐かしきインスタントレタリング(レタリングシート)。たまたま立ち寄った文具の老舗・銀座の伊東屋で見つけ、サイズ違いの数枚を購入しましたが、商品棚には取扱を中止する旨の張り紙が…。調べてみると、これがもはや絶滅寸前のアイテムだったのです。

  かつては、どこの文房具屋にも並んでいたインスタントレタリングは、テプラやワープロ、パソコンの普及とともに市場を失い、いつの間にか店先から姿を消していました。現在、国内で発売しているのは、わずか1、2社のみとなってしまったようです。

2009年12月11日金曜日

タイロッドエンドの作動角

 三菱ジープとCJ7のタイロッドを並べてみて判明したのが、三菱ジープ用タイロッドエンドの作動角の小ささ。CJ7のものと基本的なサイズは同じなのですが、その作動角には大きな違いがあります。

 タイロッドのように、作動角が問われない箇所に使用する分には何ら問題となりませんが、リフトに伴いどうしても角度がついてしまうリレーロッドで使うには、作動角を考慮した上で選定する必要があります。
 本来であれば、国産品の方が品質面でも安定しており、またミリネジであることから、三菱ジープ用を使いたいところですが、この分だとリレーロッドの両端だけは、CJ7用のタイロッドエンドを使わざるを得ないでしょう。

 ちなみにCJ7用のタイロッドエンドのネジ部は、11/16-18のインチネジ。軽く調べてみると、アメリカでは正/逆ネジタップとも比較的安価に入手できるようです。

2009年12月10日木曜日

タイロッドの切り詰め

 先日入手した三菱ジープのタイロッドを、実際にCJ7のアクスルに組み合わせてみました。

 長さを比べてみると、CJ7のアクスルに三菱ジープのタイロッドを装着するには、20mmほど切り詰める必要があると分かりました。
 で、タイロッドを切断するにあたり、どれほどの深さで内ネジが切ってあるのか確認してみると、残念ながらほとんど余裕がありません。つまり、内ネジも切り足さないとならない訳です。
 幸いにして、切断する側は順ネジ。とはいえ、M18-P1.5というサイズの細目ネジですので、タップを持っていません。それだけのためにタップを購入するのもロスなので、いつもの加工屋さんに持ち込んで、「格安」にて切り詰め・ネジ切り加工をして頂きました。

 ただし、ひとつ大きな懸念があります。というのも、ナックルアームに対するリレーロッドの作用点が本来よりも根本寄り、つまりナックルの操舵の支点であるキングピンに近くなるため、ハンドル操作が重くなってしまうことが予想されるのです。

 もっとも、アクスルスワップに伴いキャスターを意図的に立たせていますし、パワーステアリングの装着も視野に入れているので、最終的な操舵力は試走してみないと判断できません。もしハンドル操作があまりに重くなってしまったら、本来のレイアウトをベースに、リレーロッドの取り回しを再検討することにしましょう。

2009年12月9日水曜日

5BOLTと6BOLT

CJ7のハブには、5BOLTと6BOLTの2種類が存在します。年式でいうと1981年までが6BOLT、それ以後が5BOLTとされています。

 A3で使用するために用意したCJ7のアクスルは、元々6BOLTのタイプでしたので、これまであまり気に留めていなかったのですが、ふと気になって手持ちの部品在庫を確認すると、2種類のハブが出てきました。
 ここでいうボルト数とは、フリーハブやソリッドフランジをハブ本体に固定している、PCD: 3-7/16inchのボルトの数のこと。三菱ジープでも6本ですが、CJ7はモデル途中で5本に減らされているのです。その理由は、どう考えてもコストダウン以外に思いつきませんが、もちろん強度面では本数が多いに越したことはありません。
 このハブのフランジボルトには、減速されたエンジンのトルクが掛かるため、デフロック等のデバイスを装着し、大減速のギアレシオで大径タイヤを回したりすると、時として破断することがあります。実際、アメリカのCJユーザーの間では、6BOLTタイプのハブに換装するのが一般的のようですが、その理由はフランジボルトの破断対策に他なりません。

 それはともあれ、部品として入手したこのハブ、よく見ると鋳型の中心にネジ穴があいていない(もしくはネジ穴位置と鋳型が合っていない?)のは、実用上問題ないにしても気持ちの良いものではありません。製造国は記されていませんでしたが、ボルトの代わりにハブ本体が破断…なんてことは、勘弁願いたいものです。

2009年12月4日金曜日

三菱なタイロッド

 CJ7のフロントアクスルを組み込むにあたり、ちょっと悩んでいたのがステアリングリンクの処理。A3の純正アクスル(GKN製)のナックルアームまわりは、CJ7のアクスル(DANA30)に酷似しているため、ロッド類の長さだけ調整すれば「付くことには付く」のですが、フルストローク時にリレーロッドのボールジョイント(ナックル側)の作動角にあまり余裕がありません。そこで、何らかの対策を考えていたのです。

 CJ7のステアリングリンクというと、アメリカではハイクリアランスタイプの社外品が販売されています。しかし、ナックルアームのテーパー穴をストレート加工した上で、汎用のロッドエンド(ピローボール)を組み合わせるものだったりするので、個人的に今ひとつ信頼が置けず、触手がのびませんでした。

 そこで、三菱ジープ(ワイド)の純正ステアリングリンクを試してみることにしました。というのも、三菱ジープのリレーロッドはタイロッド(正確には右側タイロッドエンド)に直接接続されており、その接続方向からしてボールジョイントの作動角の制約が少ないのです。もちろん、バンプステアやロールステアを考慮するのなら、リレーロッドはナックルアームに接続し、できるだけ長さを確保すべきですが、そこはオフロードでの性能を優先するということで、割り切ります。

 当然ながら三菱ジープは右ハンドルなので、左ハンドルのA3とはリレーロッドの取り回しが逆となります。そのため、本来であれば辻褄が合わないはずなのですが、幸いにしてナックルアームに対してタイロッドの取り付く方向が、三菱ジープとCJ7のアクスルでは「逆」なのです。
 つまり、三菱ジープはナックルアームの上側にタイロッドが固定されているのに対し、CJ7のアクスルは下側に固定されます。よって、三菱ジープのタイロッドを「天地裏返し」にすれば、CJ7のアクスルにスワップした左ハンドルのA3に装着できるという、何とも都合の良い按配なのです。

 定規をあててみると、若干三菱ジープのタイロッドの方が長いようですが、何とか加工で済むレベル。ピットマンアームに固定される、リレーロッドのボールジョイントの作動角を検証した上で、リレーロッドを制作すれば、うまく装着することができそうです。

2009年12月3日木曜日

コレクターズミーティング

 先週末は、浜松で開催されたコレクターズミーティングに、参加させて頂きました。

 今回は、訳あって当方のガレージで一時お預かりしていた三菱ジープを、関西の仲間へお渡しするため、ミーティングには三菱ジープで参加しました。
 ブレーキの片効きがあまりに酷く、とても自走できる状態でなかったため、急遽当方でお預かりして修理させて頂くことになった、このジープ。クロカンで酷使されていた車両なので、多少修理をしたところで決して万全とはいえない状態でしたが、固着していたホイールシリンダーを中古品に交換し、なんとか通常走行に支障のないレベルにまで修理させて頂きました。
 事前にテストドライブを繰り返していたこともあり、結局ノントラブルで仲間の待つミーティング会場に到着することができ、ほっと一安心。 久々に「緊張感」を伴うドライブでしたが、500kmあまりの「ジーピング」は、それはそれで楽しかったというのが本音かも知れません。

 ミーティングでは、シリアスな方々とディープな話題で盛り上がり、作業のモチベーションを「急速充電」することができました。2週続けての「遠征」でしたので、さすがに疲れが残っていますが…。

2009年11月24日火曜日

スワップミート

 連休最後の月曜日は、ウォーターメインガレージさん主催のスワップミートに出掛けてきました。

 親しくさせて頂いている方からお誘いを受けたこともあって、「コーナーウェイト測定1000円!」なるブースをオープン。一部「シリアスなヨンマル乗り」な方々の車を中心に、ほぼフル稼働で測定させて頂きました。

 コーナーウェイトに興味を持たれる方の車はというと…、やはりBJ41アルミボディ、ヨンマル系エンジン換装車(1PZ、3VZ、5VZ)など「原形を留めていないもの」ばかり。中には前後コイルとなったヨンマルもあって、スケールに載せながら下回りを覗いているだけでも飽きません。

 測定結果は「個人情報」ですので公表は控えておきますが、サスが「左下がり」になっているような車では、コーナーウェイトの数値にハッキリと「理由」が現れていました。また、バッテリーを荷台に移動した車は、その効果が数値で裏付けられていましたので、スケールの周囲に人だかりができる場面も。
 ドライバーが乗車した際の荷重変化、あるいはオーバーハングに重量物を載せた時の変化を確かめてみたりと、車種こそ違えど当方も有意義なデータが得られた1日でした。

2009年11月21日土曜日

エアコンプレッサーO/H

 ARBエアロッカーの純正エアコンプレッサーは、これまで数度モデルチェンジされていますが、現在A3に組み合わせているのは比較的古いタイプ。現行モデルよりもモーターやタンク容量が大きいことから、歴代モデルの中で最良との声もありますが、トラクションタイヤのエアチャージに使うにはいずれにしても能力不足ですので、酷使は禁物です。

 エアロッカーの作動には、2キロ程度の空気圧で事足りるとはいえ、インナーパーツの供給が望めない古いコンプレッサーなだけに、一度分解点検しておくことにしました。

 オイルレスコンプレッサーの定石に従って、ピストンリングは樹脂製。使用率を超えて酷使すると、樹脂製のリングが溶解してトラブルを招いてしまうこともあるようですが、そのような痕跡もなく、シリンダーにもキズはありませんでした。
 ただし、内部に水が浸入したためか、クランクの「メインベアリング」に相当するシールドベアリングの状態を確認すると、回転に引っかかりが感じられました。そこでベアリングの品番を検索してみると、国内でも流通している汎用サイズでしたので、いつものMonotaROに発注。わずか数百円ですので、躊躇なく交換できます。

 この世代のコンプレッサーは、「クランクケース」周囲にシール等が設けられておらず、内部に水分が比較的入りやすい構造となっています。スペースの都合から床下に固定することもあって、一応の対策として液体ガスケットを使用して組み上げてみましたが、効果の程はさていかに。

2009年11月18日水曜日

プロのお仕事

 「ミスファイヤの原因がプラグだと思ったら、ハイテンションコードが寿命だった」。そんなクルマの「誤診」は珍しくもありませんし、診断に迷うことも分かりますが、今回家族が遭遇したのは、お医者の誤診。あやうく開腹手術されるところでした。


 「本当は今日、手術なんだからね」と、嫌みを聞かされながら朝イチで紹介状を書いてもらい、サードオピニオンを求めて大病院へ。
 血液検査の後、大病院の医師が下した診断は

「1週間ほど静かにしていれば大丈夫。手術なんて必要ないですし、薬も出しません」。

 えっ…?



 検査数値や学術書等をもとに、診断の根拠をきちんと説明して頂いたので、安心はしたものの、素直に喜べない私たち…。医師も苦笑いしていましたから、まあ、そういうことなのでしょう。手術の覚悟を決め、入院準備を整え、医療保険の申請準備までして診断に望んだ私たちが、馬鹿でした。

 しかも、自信たっぷりに「誤診」してくれたセカンドオピニオンの病院には、医療費を過大請求されていたことも発覚。ホント、医療不信に陥ってしまった1週間でした。ああ、疲れた…

2009年11月11日水曜日

コーナーウェイトとバネ上荷重

 スケールパッドレベラーを製作したので、A3の車重を測定してみました。

 作業途中の状態のため、冷却水や燃料が入っておらず、また一部部品が装着されていない状態ですが、ウインチを積んだ状態で1,124.5kgという結果でした。以前、コーナーウェイトゲージを借りて測定した時は1,137kgと表示されましたが、この12.5kgの違いは測定誤差ではなく、未装着部品に相当するウェイトをもう少し多く積んで測定したからでしょう。
 測定は純正のアクスルを装着した状態でしたが、作業完了時の車重は前後のアクスルをスワップし、またロールケージを組み直すことを考えても、1,200kg程度に抑えられそうです。
 
 ちなみに空車状態でのコーナーウェイトの実測値(各輪の荷重)は、フロントが(L:305.5kg R:313.0kg)、リヤが(L:247.5kg R:258.5kg)でした。実際にはドライバーが乗りますし燃料やスペアタイヤも積載しますので、数値としてはあまり参考にならないものですが、平面上の重心位置はフロントアクスルの後方1012mm、左タイヤ中心を基準として682mmの位置だと表示されました。これはちょうど、ドライバーの膝の右脇あたり。体感的なバランスは、重心位置とドライバーの着座位置との兼ね合いによっても左右されますので、実際に数値化してみると面白いものです。

 もうひとつ注目すべきは、左右の重量差。これはデフのオフセットに伴うもので、以前アクスル単体を測定した際の左右重量差と、ほぼ一致します。すなわち、バネ上荷重の左右バランスが非常に揃った車であることを示しています。

2009年11月10日火曜日

スケールパッドレベラー

 先日導入したコーナーウェイトゲージを使用するために、パッドレベラーを製作しました。

 コーナーウェイトゲージは、4枚のスケールパッドをそれぞれのタイヤの下に敷き、ケーブルで本体(表示ユニット)と接続して使用します。このため、4枚のスケールパッドの水準を揃えないと、正確な測定が行えず、測定誤差が発生してしまいます。つまり、巨大な定盤の上で測定するのが理想ということになりますが、現実はそうもいきません。

 そこで、スケールパッドの設置高を微調整し、水準を合わせるためのベース「パッドレベラー」が、純正アクセサリーとして販売されています。これを買えば解決なのですが、お値段が立派過ぎるので、アングル材とアジャストボルトを買い込んで、製作したという訳です。

 4枚のスケールパッドの水準は、レーザーレベルと水準器を使用して合わせます。セッティングに時間は掛かりますが、いくら高精度のゲージ(測定誤差0.1%)を使っても、水準が揃っていないようでは無意味ですので、そこはやむを得ないところでしょう。

2009年11月6日金曜日

アンダーソンコネクター

 先日頂いたポータブルウインチに、ちょっとした「いいもの」が付いてきました。バッテリーからの電源ケーブルを接続するための独特のコネクター、通称「アンダーソンコネクター」です。

 ポータブルウインチの電源ケーブルだけでなく、レースカーの始動用バッテリーの接続等にも使用されていますが、もちろん自動車専用品ではなく産業用の汎用品。元は米・アンダーソン パワープロダクツ社の製品であることから、「アンダーソンコネクター」と呼ばれているようです。用途としては自動車より、むしろバッテリーフォークリフトやゴルフカートの充電ケーブルに多用され、「業界基準」となっていることから、GSユアサのカタログにも掲載されています。

 このコネクターの優れている点は、オス・メスの区別がないにも関わらず、誤接続を物理的に不可能としている、独特のハウジング形状(構造)にあります。同じコネクターどうしが接続できるというのは、現物を見ないと理解し難いのですが、これがなかなか良くできています。車に用いられるのは、通常175Aもしくは50Aのアンダーソンコネクターですが、2極のハウジングはコンパクトで操作しやすく、脱着補助用のハンドルを取り付けたり、車体に固定するためのボルトホールも設けられています。事実上のデファクトスタンダードとなっているのも、使ってみれば納得です。

 以前に比べると、日本国内でも入手しやすくなったアンダーソンコネクターですが、まだまだ高価なのが難点です。そこで海外の事情を調べてみると、かなりの「内外価格差」があることが分かりました。送料は知れているので、必要に応じてアメリカから取り寄せれば、もう少し気軽に使えそうです。

 もっとも、現実としてウインチをポータブルで搭載する以外に、これといった使用法がある訳ではないのですが、バッテリーのジャンプケーブルの一端をこのコネクターにしておけば、作業もスムーズに行えるはずです。電装系の信頼性に乏しく、しかもバッテリーがシート下に押し込まれているような「特定車種」では、重宝するかも知れません。

2009年11月5日木曜日

「角度計」は万能ツール

 車のシャシー、とりわけサスペンションに手を入れる上で必要不可欠となるのが、角度計です。最近では高精度のデジタル式も安くなりましたが、私が以前から使用しているのは、単純なアナログ式のものです。

 アクスルスワップの際のキャスター角の設定を含め、このアナログ式の角度計をこれまで使ってみた限りでは、想像以上に正確です。日本ではシンワ測定(株)が取り扱っているこの角度計は、中国だか台湾のメーカーがAcuAngleという名称で製造しているものですが、自動車のレース用品として扱うメーカーもあるくらいですから、そこそこの精度が出ているのだと思います。

 それはともあれ、角度計が役立つ場面は多岐にわたります。例えば、サスペンションをリフトした際のキャスター角の変化や、プロペラシャフトの作動角も、これひとつで確認できます。最小読取値0.2°、角度精度±0.6°という測定精度も、シャシーの組立精度を考えれば必要にして充分ですが、奥まった部分など、目盛りが読み取りにくい所で測定する場合には、やはりデジタル式の方が便利でしょう。

 今回は、A3のロワーアームのフレーム側ピボットの角度を、再確認してみました。ローバーも同様ですが、アーム端が貫通するピボットのプレート部とロワーアームは、設計時の想定車高で90°(直角)になるよう、作られています。このため、スプリングを交換して車高が変化すると、串刺部分のブッシュに負荷が掛かり、早期の劣化を招くことにもなりかねません。
 これを補正するには、アーム端の角度を調整する、つまりアームを途中で曲げる等の加工が必要になります。そして、どれくらいアームの角度を修正すれば、適正な補正値が得られるかを算出するにあたり、ベースデータとなるのが、この角度計による実測値なのです。

2009年11月4日水曜日

良心なきプラスチック化

 知り合いからポータブルウインチを頂きました。アメリカではATVやトレーラー用として売られている、WARNの3,500ポンドクラスのものです。

 しかし、頂いておきながら言うのも何ですが、あまり嬉しくないのです。というのも、この3,500ポンドのWARNのウインチは「使えない」ことで有名というか、悪名高いものなのです。その理由が能力不足というのならともかくも、ギアの一部がプラスチック製という、およそ信じられない構造のため、耐久性が著しく劣るというのです。

 噂はかねがね耳にしていましたが、内部構造を目にしたことがなかったので、怖いもの見たさで早々に分解。遊星ギアはさすがに金属製でしたが、その遊星ギアが収まるハウジング(ギアケース)は、噂通りプラスチックでできていました。「3,500ポンド」というスペックを真に受けてジムニーあたりで「マトモに」使ってしまったら、これではひとたまりもないでしょう。

 一時話題となったスズキの原付・チョイノリのエンジンは、カムがプラスチック製だそうですので、構造体への樹脂の使用はもはや驚くことではないのかも知れません。しかし、オーバーロードも予想されるウインチのギアが、一部とはいえプラスチック製というのは、いくらなんでもやり過ぎです。

 ちなみに、最近のWARNのラインナップを見ると、このシリーズはモデルチェンジされ、新たにRTシリーズとして販売されています。RTシリーズの内部構造は見たことがありませんが、願わくばオールメタルであってもらいたいものです。

2009年11月3日火曜日

互換

 XJチェロキーのフロントプロペラシャフトを入手したのを機会に、ユニバーサルジョイントやフランジの規格や互換性について、調べてみることにしました。

 A3のプロペラシャフトに使用されているユニバーサルジョイントは、トランスファ側とデフ側とでサイズが異なります。デフ側は一般的な規格サイズである「SAE-1310」で、TJや三菱ジープ(ナロウ)とも共通なのですが、トランスファ側はあまり一般的ではない「1300」なのです。このように、プロペラシャフトの両端で、使用するユニバーサルジョイントのサイズを変えることは、通常ありません。あえてそのようにした理由が分からずにいましたが、今回ようやくその謎が解けました。

 A3のトランスファ(AUVERLAND A80型)のコンパニオンフランジの寸法を調べた結果、ボルトパターン(50.8×60.3mm)やセンターパイロット(勘合部)の寸法を含め、ローバーのものと完全互換でした。そして、手元にあるディスカバリーのプロペラシャフトを確認すると、使用されているユニバーサルジョイントは、案の定「1300」。
 つまり、ローバー互換のコンパニオンフランジを採用したトランスファに接続するため、A3のプロペラシャフトのトランスファ側ヨークは、ローバーのプロペラシャフトと同一のヨークを使用しているのです。
 一方、当時のA3のアクスルはダナ準拠のGKN製でしたので、デフ側には「1310」を使用したのでしょう。いうなれば、プロペラシャフトで「辻褄合わせ」をしていたことになります。

 調べてみるとローバーのユニバーサルジョイントは、80年代後半に「1310」から「1300」へと「サイズダウン」されているようで、より高負荷に耐える「1310」サイズのユニバーサルジョイントを使用した社外のダブルカルダンプロペラシャフトが、アメリカなどで販売されています。
 ローバー用のフランジは、スパイサーの汎用品にはラインナップされていない特殊サイズです。しかし、調べ上げた結果、スパイサーのダブルカルダンハウジングに組み合わせることのできる、ローバー用サイズのCVフランジを単品で販売している所が見つかりました。
 
 つまり、このローバー用CVフランジを入手し、先のXJのフロントプロペラシャフトに組み合わせれば、A3にボルトオンで装着できるダブルカルダンプロペラシャフトが、完成するという訳です。

2009年10月29日木曜日

参考書

 ナンバー付の車両を改造するにあたって、避けて通れないのが「改造申請」です。規制緩和により、改造申請のハードルが低くなるに従い、web上でも情報が得られるようになりましたが、それらを書籍として正式にまとめたものが「改造自動車等取扱いの解説」(交文社刊)です。

 運輸省(現国土交通省)自動車交通局技術安全部技術企画課推薦(長っ!)というだけあって、この専門書は陸運局の現場で実際に使用されているものです。内容は改造自動車の届出の必要な範囲、つまりどのような改造を行うと改造自動車となるのかの定義に始まり、届出手続に不可欠な各種強度計算式が示されており、なかなか読み応えがあります。

 基本的にトラックやバスの架装を想定した内容なので、的外れな部分もありますが、具体的な計算式は大いに参考になります。例えば、最大安定傾斜角度やプロペラシャフトの強度計算式、車軸強度やフレーム強度、ハブボルトの計算式なども掲載されており、届出に必要となる基本的な計算式は、ほぼ網羅されているように思います。また具体例には、トラックのホイールベース(フレーム)延長の申請例も取り上げられていて、あらぬことを妄想してしまいます。

 専門書の例に違わず全頁モノクロで写真は1点もなく、4,587円と高価なのが残念ですが、これを必要とする方にとっては、価格相応の価値がある「良書」だと思います。ISBNコードがないためamazonでは取り扱っておらず、一般書店での取り寄せは難しいかも知れませんが、陸事内にある整備振興会の売店に置いてある場合もあります。もちろん、発行元から直接取り寄せることもできるはずです。


「改造自動車等取扱いの解説
改造自動車取扱い検討委員会編
定価:4,587円

発行:株式会社交文社
東京都新宿区早稲田鶴巻町570
Tel:03-3202-7660


2009年10月28日水曜日

ミッション搭載

 代替のベルハウジングが届いたので、長らく降りたままだったトランスミッション/トランスファを、車体に積み込むことにしました。

 ベルハウジングを再度検品し、問題がないことを確認した後、トランスミッションに装着。接合部に、信頼の「トヨタ・シールパッキンブラック」を塗布した後、ボルトで結合します。
 A3のトランスミッションとトランスファは結合構造なのですが、シャシー側のワークスペースの制約から、車体からの脱着はアッセンブリーで行います。とはいっても、トランスミッションとトランスファのアッセンブリーでも重量は66kgですので、ミッションジャッキさえあれば、さして苦にはなりません。

 メンドラのスプライン部の先端がテーパー加工されていることもあって、エンジンとミッションの結合は、毎回スムーズに行えます。三菱ジープのKM140型などは、スプライン端がほとんど面取りされていないため、なかなか勘合してくれませんが、そのような苦労もありません。ミッション/ファーがさして重くないため、人力で角度の微調整や押し込みが容易く行えるというのも、大きな違いでしょう。

 エンジンとベルハウジングを固定した所で、クラッチケーブルを接続しクラッチがきちんと機能しているかを確認します。これを怠ると、すべて作業を終えてから組付ミスが発覚するという、最悪の事態を招きかねません。幸いにして自分はそのような経験をしていませんが、クラッチ交換作業後の試走で、使った中古カバーが不良品だということが判明し、愕然となった仲間がいました。作業途中での確認を怠るべからず、ですね。

 久しぶりにパワートレインが車体に戻って、スッキリしました。アクスルもそうですが、車体から降ろしておくと、意外と場所をふさぐものです。

2009年10月27日火曜日

スプリングレートテスター

 コーナーウェイトゲージを導入して、やりたかったことのひとつが、スプリングレートテスターとして活用すること。油圧プレスやダイヤルゲージを併用し、サスペンションのコイルスプリングのレートを、正確に測定したかったのです。

 実は、以前からこの方法でスプリングレートを測定していたのですが、なにぶん使用していたのが“タニタの体重計”でした。両国界隈で売っているものならともかくも、家庭用の体重計では150kgまでしか荷重を掛けることができないため、あくまで「参考値」としていたのです。
 というのも、コイルスプリングのレートは、理想的には圧縮初期から線間密着するまで一定であるはずですが(プログレッシブレートのスプリングを除く)、実際には圧縮されるに従って、レートが僅かに高くなります。つまり、走行時のスプリングレートを把握するには、走行状態(1G)に相当する荷重をスプリングにかけて測定しないと、正確なレートが求められません。そのため、最大ひょう量150kgの体重計では、目盛が足らないのです。一時は体重計を2台使って…などと、考えたこともありましたが、コーナーウェイトゲージを導入したことで、解決に至りました。

 果たして、コーナーウェイトゲージを用いて測定した結果は…、予想通り体重計で測定したスプリングレートより、高めに算出されました。しかし、体重計での測定結果は思いのほか正確で、その差は5%程度に収まっていました。
 もちろん、スプリングの材質や製法により違いがあるので、一概にはいえませんが、出所不明スプリングのレートをあたる程度であれば、体重計を使った測定法でも充分でしょう。あるいは、ジムニーのような軽量車であれば、体重計を使ったとしても、走行状態に近い条件でレート測定できるはずです。

 ちなみにこの方法で、1G(車両装着)状態でのスプリング長と同寸になるまで圧縮し、その時の体重計ないしコーナーウェイトゲージの指示値を見れば、車両のバネ上重量が比較的容易かつ正確に「逆算」できます(注:リジッドサスペンション車の場合)。

2009年10月23日金曜日

輪荷重と重心位置、重心高

 業務(といっても自動車整備業の類に非ず)でどうしても必要になることから、コーナーウェイトゲージを導入しました。ご存じの通り、コーナーウェイトゲージとは、車重を1輪ごと(いわゆる輪荷重)に測定する重量計のことで、以前余所からお借りしてA3を測定したこともありました。

 今回選択したのは、レース業界御用達・アメリカのINTERCOMP社製のベーシックモデル・SW500。とはいえ、単に重量を表示するだけに止まらず、多彩な機能を備えており、これがなかなか「使える」のです。

 四輪駆動車の設計思想の違いとして、ジープとジムニーを例に挙げ、パワートレインの搭載位置の違いに伴う重心高の差が、指摘されることがあります。しかしながら重心高の違いについて、数値的な裏付けがなされたことは皆無ではないでしょうか?
 この重心高、コーナーウェイトゲージがあれば算出できるのです。これは「傾斜測定法」と呼ばれ、水平状態での軸重と傾斜状態での軸重をそれぞれ測定し、傾斜角をもとに計算するのです。
 今回導入したコーナーウェイトゲージのアドバンテージが、この重心高の表示機能。ホイールベースとトレッド、アクスルハイト、そして傾斜(車高変化)の値を入力するだけで、測定データをもとに重心位置と重心高を瞬時に表示してくれるのです。

 夜な夜な英文説明書を読破し、機能と操作方法を把握できたら、無性にA3の重心高を測定したくなりました。重心高が分かれば最大安定傾斜角も算出できますので、トレッドとホイールベースの近い三菱ジープ(20系)やジムニー(JB33/43)と、数値上の比較をしてみようか…などと、興味は尽きません。あるいは、メーカーの謳い文句通り、ホンダのミニバンは本当に低重心なのかも、確かめたくなってしまいます。


 ちなみに一番最初に測定してみたのはウチの駄犬で、前荷重65%という結果でした。FF車並にフロントヘビーなのですね、イヌって。

2009年10月21日水曜日

イツパンデンポウハヤスカツタ

 改めて調べてみると、一般電報・本文53文字の電報料金は840円(税込)。慶弔用の台紙を使わないと、意外にリーズナブルなのですね。

 ならば…



「ジエリカンガカラダツタ」 「オレタノハヒダリガワ」



なんて、打ってみようか。

2009年10月20日火曜日

NRTからの電報

 玄関のチャイムが鳴ったので出てみると、なぜか私宛の電報! 身内で慶弔事もないですし、「カネオクレタノム」の電報ならこちらが打ちたい位ですので、何かと思って開封してみると…


 お届け台紙名『一般』

 成田空港にお荷物が届いています。
 電話番号不明のため、ご連絡ください。


なるほど、ね。

 そもそもの原因は、米国にある発送元の会社が、配送先(当方)の電話番号を伝票に記入しなかったこと。荷物が成田に到着後、通関で必要な事項を確認しようにも当方に電話ができず、某貨物会社は何とも原始的な「電報」を打って連絡を取った…、という訳でした。

 通関前に荷物の内容確認を求められることは、時々あります。民間貨物会社は電話で済ませるのが一般的ですが、航空郵便(EMS)だと連絡用のはがきが送られてきます。もっともはがきでは、届くまでに最低1日は掛かりますから、律儀な某民間貨物会社は、今回のような場合にはスピード優先で電報を使っているのかもしれません。

 で、わざわざ電報を打ってまで連絡を頂いたので、早速電話を入れて一件落着。明後日午前中に配達されるようです。

 それにしても電報って、思いもよらない用途で使われることもあるのですね。

2009年10月19日月曜日

代替ベルハウジング到着

 加工寸法不良のため、代替品を手配していたベルハウジング。ついでに発注しようと思っていた部品の見積等の都合もあって、フランスからの出荷が遅れていましたが、先週末手元に届きました。

 再度のトラブルを回避するために、「出荷前に現品を確認の後、発送してほしい」とe-mailに書き添えておいたのですが、きちんと現場にも伝わっていたようです。代替品のベルハウジングに、本来別部品(=別勘定)として設定されている、ベアリングガイドとオイルシール、そしてピボットピン(レリーズフォークの支点)まで組み込まれた状態で、送られてきました。
 ロックタイトを塗布した形跡があったので、念のため圧入部の寸法をノギスで簡易計測してみましたが、規定通りの内径に加工されていました。やはり問題のベルハウジングは加工寸法不良だった訳ですが、代替品を送って頂けましたので「不問」としましょう。

 手が空いたところでベルハウジングをミッションに装着し、パワートレインを車体に戻す予定にしていますが、貧乏性ゆえ2個の不良ベルハウジングが、どうしても捨てられません。何か有効な使い道はないものでしょうか、溶かす以外に。

2009年10月17日土曜日

英国車の品質

 昨年、ディスカバリーのエンジン(200Tdi)の腰上をオーバーホールしました。その際に気づいたのが、バルブリテーナーに入ったヘアーラインクラック。同じローバーでも乗用車用のK型エンジンでは定番のトラブルで、サーキットで暴れるとバルブが燃焼室内に脱落することがあるらしいのですが、ディーゼルエンジンでこのような不具合の事例は、あまり聞いたことがありません。

 焼結合金製と思われる200Tdiのバルブリテーナーですが、程度に違いこそあれ、4気筒8本のバルブすべてにヘアーラインクラックが入っていました。直ちに破断するようなものではないにせよ、走行15万km程度のディーゼルエンジンでは、通常あり得ないものだと思います。
 このトラブルが、固有の問題であるのかを検証するため、部品取りのエンジンも分解してみたのですが、残念ながら全く同じようにヘアーラインクラックが見られました。また、このエンジンを複数O/Hした経験のある方に伺っても、決して珍しくないトラブルとの話で、どうやら製造あるいは設計段階での問題のようです。

 樹脂成型のクオリティや電装品の信頼性が低いのはともかくも、バルブリテーナーのような重要基幹部品の品質管理がこのようでは、英国資本の自動車メーカーが市場から淘汰された理由が、分かるような気がします。

2009年10月15日木曜日

背筋が凍るハブボルト

 A3のリアにスワップするために譲り受けた、三菱Jeep(J58)のリアアクスル。屋外放置されていたものではなく、取り外す直前まで車両とともに稼働していたアクスルでしたが、よくよく見ると右側のハブボルトが5本とも危機的な状態でした。

 金属疲労によりハブボルトが破断するという事例は、まれに耳にしますが、このジープのハブボルトは腐食が進行し、首下の部分が痩せ細っていました。このまま使用し続けていればそう遠からずうちにボルトが破断し、タイヤの脱落事故を引き起こしていたはずです。
 ちょうどブレーキドラムで隠れる部分で腐食が発生しているため、タイヤ交換の際に状況が確認できないことも、ここまで状況を悪化させた要因でしょう。それにしても状況を見る限り、昨今始まった腐食ではないので、どうして過去のブレーキ整備の際に気づかなかったのか? という疑問は残ります。
 
 破断のリスクを考えると、ハブボルトは「定期交換部品」とまではいえないものの、一定年数以上経過した車両では、念のために交換しておきたい部品です。このジープのアクスルでも、左側のハブボルトが健全だったのは、過去に順ネジへ打ち替えられていたためです。年式を考えれば、右側も同時に打ち替えるべきだったでしょう。

2009年10月13日火曜日

廃品利用なハイテンションコード

 先日、とある車種用のハイテンションコードを頂きました。いわゆる「棚ずれ」の新品なのですが、残念ながら当該車種は手元にないため、長さと端子形状を確認し、手持ちの車に流用できないかを検証してみることに。

 結果、A3に流用するには長さが不足していたため、ちょうど交換時期を迎えていた下駄車のtwingoに使うことにしました。
 ただし、端子形状が異なるため、長さを揃えた上でtwingoに適した端子へと変更する必要があります。
 そこで、A3に使うため取り寄せておいた、ハイテンションコード用端子と専用ダイスを使用して、組み上げることにしました。一部ブーツは再利用しましたが、「1回目」なので、まだ大丈夫でしょう。
 
 海外では、コードと端子、ブーツがセットになった、汎用のハイテンションコード(イグニッションリード)キットが普通かつ廉価に販売されていますので、取り回しの変更に伴い、純正のイグニッションコードが使えなくなった場合などに重宝します。しかも、V8用のキットを購入すれば、4気筒車なら2台分作れますので、コストパフォーマンスは悪くありません。もっとも、最近の車はダイレクトイグニッションなので、無用でしょうが。

 
 ちなみに、某赤い国産ハイテンションコードは、「各気筒用のコードの抵抗値を揃えることで、均一の火花エネルギーをもたらす」と謳っていますが、twingoのハイテンションコードは、純正状態でも4気筒の抵抗値がきちんと揃えられています。

 「さすがルノー」と、驚くことなかれ。単に長さがすべて同じというだけのことです…。

2009年10月10日土曜日

たかがムシまわし、されどムシまわし

 先日入手した、smartのパンク修理キットに入っていた、バルブのムシ(バルブコア)まわし。改めて見てみると、これがなかなか気の利いた「アイディア工具」でした。

 ムシまわしというと、ドライバー形状のものが一般的で、これといった性能差を感じにくい工具です。品質の向上に伴い、バルブからのエア漏れといったトラブルもなくなり、普通に車と接している分には一生使わない工具かも知れませんが、オフローダーにとってはタイヤの空気圧を手際よく落とす際の必需品です。

 smartの付属品として備えられていた、オーストリア・VENTREX社製のムシまわしで感心したのは、グリップ内部にバルブコアが収納されていること。しかもムシを出し入れするグリップエンドのキャップが、バルブキャップとなっており、いずれも作業時に万が一紛失してしまった際の、スペアとなっているのです。
 もちろん、グリップ部の樹脂成型を見ても、高級工具の類でないことは明らかですが、一度でもムシを飛ばして探し回った経験があると、このさりげなく気の利いたムシまわしの価値が分かるというものです。
 こうした機能性のみならず、手の中に収まるサイズも適切で使いやすく、工具として買っても良いと思わせるものですが、残念ながら国内では流通していないようです。それらしきガイシャの解体車から調達するというのが、最も現実的な入手法でしょうか。

 ちなみに、日本車の純正パンク修理キットをいくつか見てみましたが、案の定というべきか、何の変哲もない安っぽいムシまわしとスペアのバルブコアが、ビニール袋に入っているだけでした。

2009年10月9日金曜日

リヤバンパー

 A3の純正リアバンパーは絶対的な強度が不足気味で、クリアランスを損なっていることから、作り直すことにしました。

 純正のバンパーは断面が「コ」の字形状で、ファイナルメンバーに被せるように固定するのですが、障害物との接触を考えると、もう少しボディエンドから突出させるのがベターです。
 しかし純正の取付位置のまま、ただ突出させてしまうと、デパーチャーアングルを損なうことになりかねません。そこで固定位置を高くできるよう、ファイナルメンバーに溶接されたステーから作り替えることにしました。

 バンパー本体の部材は、以前定盤の専用台を製作した時の端材で、50×100mmの角パイプ。ボルトを貫通させて固定するため、潰れ防止のスリーブを入れて溶接してあります。また、バンパーの中央部は曲げ加工をした鋼板を組み合わせることで、フックが必要以上に突出しないよう、配慮してみました。

 ちなみにこのバンパーの固定位置、写真では低く見えますが、実際のグランドクリアランスはバンパー下面で65cm以上確保しています。

2009年10月7日水曜日

スマートな日

 仕事の打ち合わせで某所に出かけた際、いつものように廃車置き場をチェックすると、事故車のsmartに目が留まりました。車体は使い物にならないのですが、シートの構造が特徴的でなかなか面白そうだったので、頂いて帰ることに…。

 後方から見るとフルバケットシート風デザインのシートは、シートバックがシェル構造となっており、ハンマートーンで塗装された鋼板製のシェルが剥き出しとなっています。後部座席の乗員への配慮が不要な2シーター車だからこそ採り得た構造ですが、見方によってはストイックな仕上がりで、これだけでも好感が持てます。
 着座部の構造はフルバケットシートとは異なっており、背部の生地はシェルに対してハンモック構造で吊られています。このため、背中への“当たり”は優しく、クッション性が確保されているあたりは、純正シートならではの配慮でしょう。
 座面部は鋼板製のシェルの上にウレタンが蓄積された構造となっているため、不出来な社外品のように「底」が抜けてしまう心配はありません。平面的で薄く見える座面ですが、ヒップポイントにあたる部分のシェルは掘り下げられていて、ウレタンのボリュームがきちんと確保されています。座り心地は固めで、ドイツ車の定石通りといった感じですが、構造上経年劣化によるヘタリも少ないようです。ちなみに製造元を確認すると、フランスのフォレシア社でした。欧州最大の自動車用シートメーカーです。

 助手席用はリクライニングしないといった制約もあるのですが、汎用レールを採用していることや、最大幅が49cmと車名通りのスマートなシートであることから、意外と他車流用に適していると思います。もっとも当方のA3には、すでにフルバケットシートを装着していますので、smartのシートは仲間内に放出する予定なのですが。

 
 シートを剥いだ後、車内を漁っていると、スペアタイヤの代替品であるパンク修理キット(コンチネンタル製)が出てきました。修理剤とともに小さなエアコンプレッサーもあったので、とりあえず確保。残念ながら、オフロードタイヤのエアチャージに使えるような代物ではありませんので、トゥインゴのトランクに放り込んでおきましょう。もちろん、スペアタイヤを降ろすつもりは毛頭ありませんけれども。

※ 訪問先は自動車リサイクル法に則った会社です。念のため。

2009年10月6日火曜日

「頂き物」でダブルカルダン化

 この週末、肉体労働と引き替えに、某所からXJチェロキーのフロントプロペラシャフトを頂戴しました。当初は「研究用」くらいにしか思っていなかったのですが、ふと胸騒ぎがしてA3のフロントプロペラシャフトと並べてみると…、何と長さが同じではありませんか!

 もちろん長さが同一というだけであれば、あえて交換する理由はないのですが、ご存じのようにXJのフロントプロペラシャフトは、等速性を持たせるためダブルカルダンを採用しています。つまり、XJのプロペラシャフトに交換できれば、A3のフロントプロペラシャフトをダブルカルダン化できることになるのです。

 ただし、さすがにボルトオンで装着という訳にはいきません。フロントアクスルをCJ7用にスワップしているため、デフ側は無加工で固定できるのですが、問題はトランスファー側。XJのトランスファーのヨークは、カルダンを直接固定するタイプのため、通常のコンパニオンフランジを採用するA3のトランスファーとの取付互換性がないのです。

 そこで目を付けたのが、TJ用のダブルカルダンプロペラシャフト。いわゆる「テールコーンエリミネーター」を装着したTJ用のリアプロペラシャフトは、トランスファー側の固定が通常のフランジ形状となっているのです。
 で、これまた頂き物(重ねて感謝)の、TJ用ダブルカルダンプロペラシャフトがあったりしまして、分解してフランジ部をチェック。すると、XJのプロペラシャフト(ダブルカルダン)との組付互換性があり、追加工をすればA3のトランスファーに装着できるようになることが分かりました。調べるとダブルカルダン用のフランジも規格品で、単体でも入手できるようです。

 A3のフロントプロペラシャフトは、作動角が比較的大きいこともあって、そのうちダブルカルダン化したいと思ってはいたのですが、このように極めてローコストに実現できるとなれば、実行に移すほかありません。モチベーションが高い今のうちに、フランジの加工を依頼してきましょう。

2009年10月1日木曜日

ID:22mmのCoolant Hose

 横置きでの搭載を前提に基本設計されたプジョー製のエンジンを、縦置きで搭載しているA3は、インテークやクーラントのパイピングの取り回しに、少なからず無理があります。

 以前、ラジエータをFord Escort Cosworth用の社外品に交換した目的のひとつが、ラジエータパイピングの取り回しを適正化することにありました。しかし、何せサーモスタットがエンジンのバルクヘッド側にあるため、構造上どうしても長いホースを使わざるを得ない箇所もあります。
 そのひとつが、ラジエータのサブタンクへとつながるホースです。A3は欧州車の定石に従ってサブタンク加圧式で、ラジエータキャップもサブタンクに装着されます。当然、サブタンクへとつながるホースは通常よりも太く、内径が22mm(7/8inch)というものです。
 このホース、長さが30cm程度であれば他車流用を検討するのですが、A3には100cmほど必要になるため、汎用のホースを探さなくてはなりません。そこで、ブリヂストンの工業用耐熱ホース等のラインナップを見たのですが、残念ながら22mmはなく、19mm(3/4inch)か25.4mm(1inch)になってしまいます。どうやら日本国内において、一般的なサイズではないようです。

 もちろん、メーカーから素直に部品で取れば、何ら悩むことはないのですが、ホースだけのために外為送金するのもロスになってしまいます。そこでwebを徘徊してみると、海外ではさして珍しくないサイズのようで、小口で切り売り対応しているUKの業者が見つかりました。GOODYEAR製というのがやや気になりますが、送料を入れても¥1500/m!ですので、背に腹は代えられません。近々取り寄せてみるつもりです。
 
 このクーラントホースに限らず、例えばエアロッカーのナイロンチューブやID:7mmの燃料ホースなど、海外では流通しているものの、日本では規格外となるホースは、結構ありますね。

2009年9月30日水曜日

続・フレアリングツール

 以前取り上げたマスタークール社製の手動油圧式フレアリングツールに関して、従来のフレアリングツールの加工精度の低さに悩まされている方が、思いの外いらっしゃるようで、当Weblogのアクセス履歴を見ても、「フレア加工 失敗」といった検索キーが並んでいたりします。

 先日も知人から相談を受けたのですが、何でも航空機のレストアにも使いたいとのことでしたので、改めて調べてみることにしました。というのも、航空機に用いられているパイプのフレアはAN規格で、テーパー角が37°というもの。自動車のブレーキ等に用いられている45°のフレアとは、テーパー角が異なります。
 もっともAN規格のフレアは、アールズ等のパイピングにも用いられていますので、そこまで特殊ではないのですが、さすがのマスタークール社製のフレアリングツールセット(#71475)にも、AN規格用のダイスまでは入っていません。

 そこでオプションのダイスを調べてみると、以前は設定がなかったと記憶しているAN規格用のダイスが、きちんとラインナップに追加されていました。基本セットに追加して、AN規格用のダイスとコーンを買うと、合計$400近くについてしまいますが、加工精度は折り紙付き。むしろ、45°のフレア加工しかできない国産のハスコー製に比べると、マスタークール社製のフレアリングツールは機能が豊富で、コストパフォーマンスは高いと思います。

2009年9月29日火曜日

水温センサーの移設

 A3のエンジンはプジョー製で、FFモデルの乗用車に搭載されているものです。つまり、横置きで設計されたエンジンを、A3では縦置きに搭載していることになります。

 ガソリンモデルのA3に当初搭載されていたのは、プジョー205/309等に設定されていた、1,580ccのXU5型。XU5型にも多くの仕様がありますが、A3に搭載されていたのはシングルキャブレターのベーシックなモデルでした。そこで、A3を入手して早々に、XU5型のストロークアップ版にあたる309GTi用のXU9型(1,905cc・130ps)へ、インジェクションシステムごと換装してしまいました。
 そもそもガソリンモデルのA3のバルクヘッドは、一部が大きく切り開かれており、ディストリビューターを室内側へと食い込ませる形で、逃がしています。このように、もともとエンジン後端とバルクヘッドとのクリアランスに余裕がないA3に、インジェクション仕様のXU9型を換装するには、補機や配管の取り回しを変更しなくてはなりません。

 そのひとつが、インジェクション制御用の水温センサーです。本来は、サーモスタットハウジングからエアミックス式のヒーターコアに向かう配管上に位置するのですが、それではバルクヘッドと干渉してしまうのです。そこで、センサーの設置場所を移動しようと考えていましたが、A3のヒーターはリヒート方式(シーズンバルブが付くタイプ)ということもあり、最も確実なサーモスタットハウジングにタップを立て、センサーを打つことにしました。
 
 いわゆるフロントミッドシップレイアウトを採るA3は、エンジンが室内側に大きく食い込んでいるため、エンジン後端の整備はウニモグやハマーと同様、室内側から行います。今回加工したサーモスタットハウジングは、ディストリビューターの固定部まで一体構造となっていますが、その脱着も室内側から問題なく作業できます。サービスホールも必要にして充分な面積が確保されていますので、センターカバーを外す手間さえ惜しまなければ、整備性は悪くない…と思います。

2009年9月23日水曜日

達筆 仏語版

 手元にあるこの1枚の紙は、私のA3のファブリケーションシート。車両の製造行程で使用された、いわゆる「製造指示書」です。

 それによると、私のA3は1988年5月5日に組み立てを開始し、5月11日に完成したとのこと。泉谷しげると誕生日が同じらしい…というのは、どうでもよい話ですが、ファブリケーションシートに記載された仕様はエンジンはガソリンで、装備は標準幌仕様の4速MT。塗色はNOIR(黒)で、タイヤはミシュランのXCM+S4とあります。

 気になっていたのは、裏面に書き込まれたチェックリストらしき項目です。「要手直し箇所」を殴り書きしたものらしいのですが、先のピニオンハイトの数値と同様、あまりに「達筆」なため、判読できませんでした。そこで、フランス人の知り合いに画像をe-mailで送り、英訳してもらいました。

 そのチェック内容は、Silent heats the floor/ Sealing left front door / fixing heating cover tightening collar, check flight / Air Filter / Dunlop Tire / pull starter だそうで。

 もっとも、直さなくてはならないところは、他にもありそうな気がします…。

2009年9月19日土曜日

達筆

 海外の方の書く文字は総じて「達筆」で、FAXでメッセージのやりとりをしていた時代には、幾度となく苦労させられました。そして連絡手段がe-mailになった時には、本当に便利な時代になったものだと、感じたものです。

 これまでで、最も彼らの「達筆」ぶりに困ったのが、以前アメリカから取り寄せたデフのピニオンギアに刻まれた、文字(らしきもの)です。本来であれば、ピニオンハイトを示す数字が電気ペンで記されているはずなのですが、いったいこれが数字であるのかさえ分からない始末。文章と違って、前後の文脈から推測することもできないので、弱りました。

 やむを得ず、ピニオンギアに刻まれた数字(らしきもの)を写真に撮り、アメリカ在住の方にe-mailで「解読」を依頼したところ、「恐らく5ではないか」とのこと。そう言われてみれば、「5」のようにも見えますが、他に「0」と思しき文字も記されていて、どうも確証が持てません。もちろん、ピニオンハイトが分からなくても、シムを幾度か入れ直せば組めますが、手間を考えると規定値が分かるに越したことはありません。

 そこで確認のため、手持ちのデフに組み込まれていたピニオンギアと、ピニオンハイトを測り比べてみることにしました。測定用定盤の上にピニオンギアを立て、ダイヤルゲージでギアのハイトを測定したところ、ピニオンハイトは+0.13mm。つまり、5/1000インチということで、先の数字(らしきもの)は「5」で正解だったという訳です。

 一部社外品のリング&ピニオンギアには、ピニオンハイトが記されていないものもあるようですが、そうした場合でも定盤上で測定し、ピニオンハイトを事前に調べておけば、スムーズに組み込むことができるでしょう。

2009年9月17日木曜日

メーターの清掃

 A3の計器は、いわゆる規格サイズの汎用品で、ダッシュパネルの丸穴に装着されています。このメーターは、ベゼルにシールが組み込まれ一応防滴構造にはなっているものの、年月の経過とともに裏側から埃が入り込み、ガラスが曇っていました。

 いくら車体を全塗装して仕上げても、常に視界に入るメーターがこのような状態では、今ひとつシャキッとしません。かといって、壊れている訳でもないものを、新品に交換するのは、勿体ない。そこでメーターを分解し、清掃することにしました。
 通常、この手のメーターは非分解式とされていますが、ベゼル周囲のカシメ部分を起こせば、物理的に分解することは可能です。A3のメーターベゼルはアルミ製でしたので、樹脂製の内装剥がし(リムーバー)を使用することで、カシメ部分を簡単に起こすことができ、10分も掛からず分解できました。
 文字盤に触れないようにしながら内部の埃をエアブローし、パーツクリーナーで清掃したガラスを組み込むと、見事なまでに新品時の初々しさを取り戻すことができました。
 写真でもこれだけ違いが分かる程ですから、明らかに透明度が低下しているメーターは、一度分解清掃してみる価値はあると思います。

追記:以前から気になっていたメーターの製造元が、ようやく判明。アメリカのダトコン社製でした。

2009年9月16日水曜日

とりあえずは解決、か

 加工精度不良のベルハウジングの交換(実質的には再送になりますが)を、メーカーの担当者宛にメールでお願いしたところ、さっそく返事が届きました。

 「だからロックタイトで大丈夫だって!」

 などと書いてあったらどうしようかと、内心ドキドキしながらメールを読み解いてみると…、ああ、良かった。私のイカレた英文から、こちらの意図を「読み取って」頂けたようです。
 曰く、「オメーさんが心配するのも無理ないな。替わりのハウジングを送ったるから、何か追加で注文する部品があったら、連絡寄こしな」とのこと。
 Oui、 ちょうど発注したい部品があったので、渡りに船です。ここ数週間円高傾向ですし。

 ところで昨年、このベルハウジングを含む補修部品を取り寄せた際には発送漏れがあり、不足していた部品2点を後から送ってもらいました。つまり、代替のベルハウジングは「三度目の正直」ならぬ「三度目の出荷」となる訳です。
 発送担当者は上司から訓戒…などということは、ないんでしょうね。ラテンですから。

2009年9月15日火曜日

ヲイヲイ

 バカンス中かと思っていたMr.ジルから、e-mailが届きました。

 英文を解読(幸いにして連絡は仏文ではなく英文です)すると…、ナニナニ、現場のメカニックは「んなもん、ロックタイトでノープロブレム!」と言っているらしい。おいおい、それは現場は現場でも、「現場修理」のメカニックに聞いたのではありませんか?

 確かに、はめあい用のロックタイト(最高強度の#638等)を使用すれば、かなりの強度が出ることは承知していますし、実際、手持ちの在庫もあります。しかしこの手の製品は、はめあい隙間が過大となってしまった時に「やむを得ず」使う性格のものですから、新品のベルハウジングで使うというのは、どうも気が乗りません。もちろん、ショップマニュアルには「ロックタイトで固める」などと記されているはずもなく、ハンマーで打ち込むよう手順が指示されています。

 とりあえずは乏しい英語力とWeb翻訳を駆使し、ニンゲンカンケイを崩さないようI'd appreciateなんて言い回しで、やんわりと「代替品の送付」を求めてみましたが、取り寄せてから1年以上経つ部品なので、どうなることやら。まあ、最悪はスリーブ打って使えばいいか。


 それにしても…、ここ最近ツイていないように思うのは、気のせい?

2009年9月14日月曜日

リアディスク化へ 10

 しばらく作業が停滞していたリアブレーキのディスク化ですが、キャリパーの固定位置を確認するため、端材から仮のブラケットを切り出してみました。

 ご存じの通り、三菱ジープのリアアクスルはセミフロート方式ですので、単純にアクスルエンドのフランジにブラケットを抱えさせることができません。正攻法で製作するのであれば、以前のエントリーでも記したように、リテーナとキャリパーブラケットを一体構造にする必要があるのです。実際、図面を起こして検証してみたのですが、どうしても加工が複雑になってしまう(=コストが掛かる)ため、より簡素化した構造に変更できないか再検討していた…というのが、これまでの経緯。

 その後、使用するローターのオフセットやキャリパーとの組み合わせを考慮しつつ、リアハブまわりの形状と寸法を確認した結果、変則的な手法ながらブラケットの構造を大幅に簡略化する目処がつきました。そこで、ひとまずは仮のブラケットを切り出し、キャリパーのマッチングを確認することにした訳です。

 使用予定のローターはまだ入手していないため、手元にあった別車種用のローターを、仮に合わせてみました。ローターの外径やハブへの固定方法は、使用予定のローターとは異なりますが、キャリパーとの位置関係に問題ないことが、確認できました。また、キャリパーの取付角度は現物合わせで決めたのですが、10時半の位置に固定することで、コイルスプリングとの干渉が避けられることも、現物で確認しました。
 
 図面を微修正すれば、ほぼ設計は完了。ローターやハブベアリングなどの材料を揃えた上で、製作を依頼するとしましょう。

2009年9月12日土曜日

バカンスは最長5週間

 …なんでも、フランスでは法で定められているそうです。

 そして懇意にしている担当者は、今その権利を行使している最中のようで、ベルハウジングの件についても返信がありません…。

 もちろん、会社全体の機能が停止している訳ではないので、メーカーの窓口には連絡つくはずですが、こちとら急いでいる訳ではないので、ここはMr.ジルの休暇明けまで待つことにしましょう。「フランス人はバカンスのために生きている」と揶揄されるくらいですから、携帯に直電するのも野暮というものでしょう。


2009年9月11日金曜日

プジョー・BA7/4型T/M

 A3のトランスミッションは、エンジンと同じくプジョーから供給を受けたもので、型式名・BA7型。このトランスミッションは、プジョー最後のFRモデル・505に採用されていたものです。

 BA7型は、2リッタークラスの乗用車を想定した、ライトデューティーなトランスミッションです。分割式のケース構造や結合ボルトの少なさを見ても、剛性面で優れているとは言えず、ロックピン式のシンクロメッシュを採用していることからも、旧世代のトランスミッションという印象を受けます。それもそのはず、BA7型は505だけでなく、その先代の504から使われ続けているトランスミッションなので、60年代に基本設計されたものなのです。
 このBA7型トランスミッションの美点をあえて挙げるなら、整備性と部品の入手性に優れていることでしょうか。分割式ケース構造の利点で、15分もあればケースとギアトレーンを分解することができ、しかも特殊な工具は一切必要ありません。また、オイルシールはすべて規格品であるため、メーカー純正品ではなく汎用のオイルシールを使用できます。補修部品も世界的に見れば入手は容易で、504や505は本国での生産終了後も、極々最近までアフリカや中国で生産されていましたから、当面部品の供給に問題はないでしょう。

 ちなみに、一時期のジープYJに使用されていた「プジョーミッション」ことBA10型は、BA7型の兄弟機にあたります。極少数生産された2.1リッターディーゼルモデルのA3には、BA7型に代わり、BA10型のトランスミッションが設定されていましたので、ベルハウジングの取付互換性はあるのかも知れません。

2009年9月10日木曜日

切断砥石とケガキ

 モノ作り系クルマ趣味人にとって、ディスクグラインダー(サンダー)は切った貼ったの作業に欠かせないツールのひとつです。ディスクグラインダーと溶接機があれば、ブラケットのような細かい作り物だけでなく、例えばアクスルのビルドアップといった大作業もこなせますので、費用対効果を考えると、究極の“SST”といえるかも知れません。

 日立製のディスクグラインダーとともに、当方が愛用しているのは、レジボン製の切断砥石・スーパーカットRSC。それも、最も薄い1mmタイプを指名買いしています。このスーパーカットRSC、砥石の材質と薄さの相乗効果により、切断速度が極めて速いのが特徴で、若干高価ではあるものの、業界定番の「金の卵」を上回っているように感じます。もちろん1mm厚の砥石ですので、無理な力を加えたりワークに食い込ませてしまうと、割れてしまうこともありますが、正しく構えて作業すれば、破損をかなり防ぐことができるはずです。
 
 1mm厚の砥石を愛用しているもうひとつの理由は、正確に切断できることにあります。切り始めで手元が狂わなければ、0.5mm単位の切断精度を保つことも、決して不可能ではありません。ただしそのためには、ちょっとしたケガキの工夫が必要です。
 ワークのケガキというと、マジックで描いたり、あるいはケガキ針やハイトゲージを使って行うのが一般的だと思います。しかし、いずれもディスクグラインダーで切断する際の視認性は今ひとつで、ともすると手元が狂う原因にもなります。
 そこで私は、ケガキ線に沿って色付のマスキングテープを貼り、それを基準線にして切断しています。たったこれだけの工夫ですが、基準線が明確になるだけで加工精度は飛躍的に向上しますので、ひとたび慣れてしまうと、もはやマスキングテープなしに作業することなど、考えられなくなってしまいます。
 ヘビーユーザーの方は、皆様独自のノウハウをお持ちだと思いますが、未だマジックで描いた線に沿って砥石を這わせている方は、一度お試しあれ。

2009年9月9日水曜日

made in Russia

 インド製のドライブシャフトの「貧質」について書きながら、ふと思い出したのが、VAZ-2121(Lada Niva)用のブレーキパッド。部品庫を探してみると…、見つかりました。使うアテは全くないのですが、「渡露の思い出」として保管しておいたのです。捨てずに。

 このニーバ用のブレーキパッドは、2003年夏にサハリンに出かけた際、現地の部品屋で1枚200円(当時の邦貨換算)で買い求めた、いわゆる社外品です。
 1台分800円という値段もさることながら、驚くべきはそのクオリティです。ベースのスチールプレート部が明らかに再利用品で、それも過去数度使い回しされたと思しき「貼替品」なのです。それがマトモなものなら問題はないのでしょうが、プレートの厚さは4枚すべて異なっていて、強度に不安を感じるほど薄いものも混じっています。
 そして極めつけは、腐食によってボロボロになったプレートを再使用した1枚のパッド。まるで軽石に摩擦材を貼り付けたような仕上がりには、言葉を失ってしまいます。ちなみに現物は、写真で見るより数段酷く、「質感」が伝わらないのが「残念」です。

 果たして実際に使えるのかは甚だ疑問ですが、ニーバの片引き3ピストンのキャリパーなら、こんなパッドでも押せるのでしょうか?

2009年9月8日火曜日

made in India

 補修部品といえばメーカー純正品のことを指す我が国(日本車)とは対照的に、海外では社外メーカー製の補修部品が広く流通しており、「パターンパーツ」とも呼ばれています。メーカー純正の補修部品に比べ廉価な「パターンパーツ」ですが、純正部品納入メーカーがパッケージだけ変えて販売しているものから、中国やインドあたりで製造した、いわゆるコピー品まであり、その品質は「玉石混淆」。そして今回は、運悪く「石」に当たってしまったというオハナシです。

 A3に使用するCJ7のフロントアクスルのオーバーホールにあたり、パターンパーツのドライブシャフトを発注したところ、届いたシャフトのパッケージには「made in India」の文字が…。マヒンドラ繋がりでインド製なのでしょうが、どことなく「胸騒ぎ」がしたので各部を確認すると、案の定? クロスジョイントのCクリップ(スナップリング)が、ゴムシール部に刺さっているのを発見…。そのままではベアリングレースが抜けてしまいますし、どのみちシールが破れてしまっているので、組み直さないことには使用できません。
 しょうがないので、クロスジョイントを交換しようとしたところ、どうもオカシイ。U字型をしたヨークの内側にCクリップを組み込む構造なのですが、それがどうやっても入りません。ベアリングレースを軽くプレスで押しながら試みるも、全く入る気配がないのです。

 これはもしや…と思い、ヨークの寸法(アゴ内寸)をノギスで測定してみると、驚くことに規定値よりおよそ1mmも狭く、これではCクリップが入らないのも当然です。むろん、製造時にも気づいたはずですが、無理矢理ゴムシールにCクリップを刺して、何食わぬ顔で出荷してしまうあたり、昔のカレーのCMではありませんが、「インド人『に』びっくり」です。
 それはともあれ、改めてこのドライブシャフトを観察すると、左右対称であるべきはずのヨークが、芯が出ているのか不安になるほど偏った形状になっています。内寸の加工ミスと併せて、もはや「笑う」しかありません。


 今はただただ、「マトモ」な代替品が届くことを、祈るばかりです。

2009年9月5日土曜日

そんなことより現実は…

 怪しいクラック状の「ス」が見つかったベルハウジングの交換用として、昨年メーカーから大枚 €218 叩いて取り寄せておいた、ベルハウジング。その後、なかなかミッションを降ろそうという気にならず、今日まで保管していたのですが、いよいよ日の目を見る時が訪れました。

 のはずが…。
 
 レリーズベアリングがスライドするベアリングガイド(メンドラに被さるように固定されている筒状の部品)を、新しいベルハウジングに移し替え、圧入しようしたところ、なぜか緩いのです。部品で取ったベルハウジングのセンターボアをノギスで測定してみると、古いベルハウジングより直径にして0.3mm大きく、これでは圧入できないどころかガタついてしまうのも当然です。考えられるのは、ベアリングガイドが設計変更されたか、あるいは(前夜深酒した)職人さんがベルハウジングを削り過ぎたかの、いずれかでしょう。
 ミッション、ファーを組み直し、ベルハウジングを交換して「サクッ」と車体に戻すつもりでいたので、「想定外」の事態に拍子抜けしてしまいました。センターボアが規定値より小さいのであれば、追加工で対処できたのですけれど…。

 いつものメーカーのお偉いさんに、e-mailで状況を伝えましたが、珍しく2日経っても返信がありません。これはもしかして、ちょっと遅めのバカンス中デスカ?

2009年9月4日金曜日

「餅」の絵を描いてみる

 A3のトランスファ(AUVERLAND A80型)のHi/Lo比は約2倍。Lo-1速の総減速比は40倍ですので、排気量を考えるとローレンジの減速比を大きくしたいというのが本音です。

 しかしながら、A3の「ローギアードキット」なるものは、残念ながら本国にも存在しません。よってローギアード化するには、トランスファのギアを製作するか、あるいはトランスファを換装するしかないのです。もっともトランスファを換装するといっても、ミッションと一体結合構造ですから一筋縄でいくはずもなく、「ギアを製作する方が“現実的”」というのが、自らの中で下した結論です。
 クルマがクルマですから量産効果も期待できず、果たしてどれほどのコストで製作できるのか未知数な現状では「絵に描いた餅」に過ぎませんが、ギアトレーンの構造を把握しないことには「絵」すら描けません。そこで今回、トランスファを分解してみたという訳です。

 過去オーバーホールした際に、教科書通りの3軸式構造であることは把握していたので、今回の目的は歯数のカウントと、ケース内のクリアランスの測定でした。結論からいえば、現状のギアモジュールを維持し、カウンターギアとアウトプットギアだけ製作するに留めた場合、クリアランスの制約から、3倍減速が限界だと分かりました。そして、3倍以上の大減速を求めるのであれば、3軸すべてのギアを製作する必要がある、ということも。このあたり、ジムニーのローギアードキットの「違い」と同じで、当然コストは跳ね上がってしまいます。

 排気量を考えると総減速比で80倍程度、つまりトランスファレシオで4倍程度の減速を期待したいので、目指すところはトランスファ内の「ギア総入替」ということになります。果たしていつ実行に移せるのかは分かりませんが、まずは「500円玉貯金」でも始めようかと、思い巡らす今日この頃です。

2009年9月3日木曜日

ファクトリーメイドのFF可能トランスファ

 以前渡仏した際に、オーバーランド(パナール)社を訪問し、従業員の方の“プライベートマシン(A3Fベース)”に試乗させて頂きました。そのA3Fは外観こそ冴えない(失礼!)ものの、「ファクトリーワーカー」の特権を生かした加工が各所に施されており、実に素晴らしい仕上がりでした。

 感心したもののひとつが、「FF」も選択できるように加工されていた、トランスファです。フロントアウトプット側に本来備わるハウジング(駆動断続のためのドグクラッチを内蔵)を、リアアウトプット側にも追加することで「FF化」しているのですが、言うは易し行うは難し。今回、分解したトランスファを改めて観察してみて、「FF化」するにはアウトプットシャフトの加工も不可欠であると分かり、氏が「加工は大変だった」と語っていた理由が、実感できた次第です。(写真は「FF化」のために、リアアウトプット部に追加されたハウジング。フロントアウトプット側に本来備わるハウジングの転用ですが、溶接痕からも苦労が偲ばれます。)

 自らのA3のトランスファを分解するにあたり、実はこの「FF」加工にも少し「興味」を持っていました。しかし事前に予想していた通り、リアアウトプット部にドグクラッチを追加すると、トランスファの全長が伸びてしまい、クロスメンバーと干渉してしまいます。従業員の方のA3Fは、エンジン・ミッション・トランスファの固定位置を、車両前方に移動(恐らく50mm程度)することで干渉を避けているようですが、当方のA3ではエンジンの直前にウインチをマウントしていることもあり、パワーユニットは移動できません。よって、「FF」加工も諦めることにしました。
 もちろん、どうしても「FF」加工するのであれば、クロスメンバーの位置や形状を変更すれば、解決はできるでしょう。ただ、なまじ「FF」加工ができてしまうと、またしてもクルマの完成が遅れることは必至ですので、今回ばかりは悪あがきせず「できなくて良かった」と思うことにしています。