2009年9月30日水曜日

続・フレアリングツール

 以前取り上げたマスタークール社製の手動油圧式フレアリングツールに関して、従来のフレアリングツールの加工精度の低さに悩まされている方が、思いの外いらっしゃるようで、当Weblogのアクセス履歴を見ても、「フレア加工 失敗」といった検索キーが並んでいたりします。

 先日も知人から相談を受けたのですが、何でも航空機のレストアにも使いたいとのことでしたので、改めて調べてみることにしました。というのも、航空機に用いられているパイプのフレアはAN規格で、テーパー角が37°というもの。自動車のブレーキ等に用いられている45°のフレアとは、テーパー角が異なります。
 もっともAN規格のフレアは、アールズ等のパイピングにも用いられていますので、そこまで特殊ではないのですが、さすがのマスタークール社製のフレアリングツールセット(#71475)にも、AN規格用のダイスまでは入っていません。

 そこでオプションのダイスを調べてみると、以前は設定がなかったと記憶しているAN規格用のダイスが、きちんとラインナップに追加されていました。基本セットに追加して、AN規格用のダイスとコーンを買うと、合計$400近くについてしまいますが、加工精度は折り紙付き。むしろ、45°のフレア加工しかできない国産のハスコー製に比べると、マスタークール社製のフレアリングツールは機能が豊富で、コストパフォーマンスは高いと思います。

2009年9月29日火曜日

水温センサーの移設

 A3のエンジンはプジョー製で、FFモデルの乗用車に搭載されているものです。つまり、横置きで設計されたエンジンを、A3では縦置きに搭載していることになります。

 ガソリンモデルのA3に当初搭載されていたのは、プジョー205/309等に設定されていた、1,580ccのXU5型。XU5型にも多くの仕様がありますが、A3に搭載されていたのはシングルキャブレターのベーシックなモデルでした。そこで、A3を入手して早々に、XU5型のストロークアップ版にあたる309GTi用のXU9型(1,905cc・130ps)へ、インジェクションシステムごと換装してしまいました。
 そもそもガソリンモデルのA3のバルクヘッドは、一部が大きく切り開かれており、ディストリビューターを室内側へと食い込ませる形で、逃がしています。このように、もともとエンジン後端とバルクヘッドとのクリアランスに余裕がないA3に、インジェクション仕様のXU9型を換装するには、補機や配管の取り回しを変更しなくてはなりません。

 そのひとつが、インジェクション制御用の水温センサーです。本来は、サーモスタットハウジングからエアミックス式のヒーターコアに向かう配管上に位置するのですが、それではバルクヘッドと干渉してしまうのです。そこで、センサーの設置場所を移動しようと考えていましたが、A3のヒーターはリヒート方式(シーズンバルブが付くタイプ)ということもあり、最も確実なサーモスタットハウジングにタップを立て、センサーを打つことにしました。
 
 いわゆるフロントミッドシップレイアウトを採るA3は、エンジンが室内側に大きく食い込んでいるため、エンジン後端の整備はウニモグやハマーと同様、室内側から行います。今回加工したサーモスタットハウジングは、ディストリビューターの固定部まで一体構造となっていますが、その脱着も室内側から問題なく作業できます。サービスホールも必要にして充分な面積が確保されていますので、センターカバーを外す手間さえ惜しまなければ、整備性は悪くない…と思います。

2009年9月23日水曜日

達筆 仏語版

 手元にあるこの1枚の紙は、私のA3のファブリケーションシート。車両の製造行程で使用された、いわゆる「製造指示書」です。

 それによると、私のA3は1988年5月5日に組み立てを開始し、5月11日に完成したとのこと。泉谷しげると誕生日が同じらしい…というのは、どうでもよい話ですが、ファブリケーションシートに記載された仕様はエンジンはガソリンで、装備は標準幌仕様の4速MT。塗色はNOIR(黒)で、タイヤはミシュランのXCM+S4とあります。

 気になっていたのは、裏面に書き込まれたチェックリストらしき項目です。「要手直し箇所」を殴り書きしたものらしいのですが、先のピニオンハイトの数値と同様、あまりに「達筆」なため、判読できませんでした。そこで、フランス人の知り合いに画像をe-mailで送り、英訳してもらいました。

 そのチェック内容は、Silent heats the floor/ Sealing left front door / fixing heating cover tightening collar, check flight / Air Filter / Dunlop Tire / pull starter だそうで。

 もっとも、直さなくてはならないところは、他にもありそうな気がします…。

2009年9月19日土曜日

達筆

 海外の方の書く文字は総じて「達筆」で、FAXでメッセージのやりとりをしていた時代には、幾度となく苦労させられました。そして連絡手段がe-mailになった時には、本当に便利な時代になったものだと、感じたものです。

 これまでで、最も彼らの「達筆」ぶりに困ったのが、以前アメリカから取り寄せたデフのピニオンギアに刻まれた、文字(らしきもの)です。本来であれば、ピニオンハイトを示す数字が電気ペンで記されているはずなのですが、いったいこれが数字であるのかさえ分からない始末。文章と違って、前後の文脈から推測することもできないので、弱りました。

 やむを得ず、ピニオンギアに刻まれた数字(らしきもの)を写真に撮り、アメリカ在住の方にe-mailで「解読」を依頼したところ、「恐らく5ではないか」とのこと。そう言われてみれば、「5」のようにも見えますが、他に「0」と思しき文字も記されていて、どうも確証が持てません。もちろん、ピニオンハイトが分からなくても、シムを幾度か入れ直せば組めますが、手間を考えると規定値が分かるに越したことはありません。

 そこで確認のため、手持ちのデフに組み込まれていたピニオンギアと、ピニオンハイトを測り比べてみることにしました。測定用定盤の上にピニオンギアを立て、ダイヤルゲージでギアのハイトを測定したところ、ピニオンハイトは+0.13mm。つまり、5/1000インチということで、先の数字(らしきもの)は「5」で正解だったという訳です。

 一部社外品のリング&ピニオンギアには、ピニオンハイトが記されていないものもあるようですが、そうした場合でも定盤上で測定し、ピニオンハイトを事前に調べておけば、スムーズに組み込むことができるでしょう。

2009年9月17日木曜日

メーターの清掃

 A3の計器は、いわゆる規格サイズの汎用品で、ダッシュパネルの丸穴に装着されています。このメーターは、ベゼルにシールが組み込まれ一応防滴構造にはなっているものの、年月の経過とともに裏側から埃が入り込み、ガラスが曇っていました。

 いくら車体を全塗装して仕上げても、常に視界に入るメーターがこのような状態では、今ひとつシャキッとしません。かといって、壊れている訳でもないものを、新品に交換するのは、勿体ない。そこでメーターを分解し、清掃することにしました。
 通常、この手のメーターは非分解式とされていますが、ベゼル周囲のカシメ部分を起こせば、物理的に分解することは可能です。A3のメーターベゼルはアルミ製でしたので、樹脂製の内装剥がし(リムーバー)を使用することで、カシメ部分を簡単に起こすことができ、10分も掛からず分解できました。
 文字盤に触れないようにしながら内部の埃をエアブローし、パーツクリーナーで清掃したガラスを組み込むと、見事なまでに新品時の初々しさを取り戻すことができました。
 写真でもこれだけ違いが分かる程ですから、明らかに透明度が低下しているメーターは、一度分解清掃してみる価値はあると思います。

追記:以前から気になっていたメーターの製造元が、ようやく判明。アメリカのダトコン社製でした。

2009年9月16日水曜日

とりあえずは解決、か

 加工精度不良のベルハウジングの交換(実質的には再送になりますが)を、メーカーの担当者宛にメールでお願いしたところ、さっそく返事が届きました。

 「だからロックタイトで大丈夫だって!」

 などと書いてあったらどうしようかと、内心ドキドキしながらメールを読み解いてみると…、ああ、良かった。私のイカレた英文から、こちらの意図を「読み取って」頂けたようです。
 曰く、「オメーさんが心配するのも無理ないな。替わりのハウジングを送ったるから、何か追加で注文する部品があったら、連絡寄こしな」とのこと。
 Oui、 ちょうど発注したい部品があったので、渡りに船です。ここ数週間円高傾向ですし。

 ところで昨年、このベルハウジングを含む補修部品を取り寄せた際には発送漏れがあり、不足していた部品2点を後から送ってもらいました。つまり、代替のベルハウジングは「三度目の正直」ならぬ「三度目の出荷」となる訳です。
 発送担当者は上司から訓戒…などということは、ないんでしょうね。ラテンですから。

2009年9月15日火曜日

ヲイヲイ

 バカンス中かと思っていたMr.ジルから、e-mailが届きました。

 英文を解読(幸いにして連絡は仏文ではなく英文です)すると…、ナニナニ、現場のメカニックは「んなもん、ロックタイトでノープロブレム!」と言っているらしい。おいおい、それは現場は現場でも、「現場修理」のメカニックに聞いたのではありませんか?

 確かに、はめあい用のロックタイト(最高強度の#638等)を使用すれば、かなりの強度が出ることは承知していますし、実際、手持ちの在庫もあります。しかしこの手の製品は、はめあい隙間が過大となってしまった時に「やむを得ず」使う性格のものですから、新品のベルハウジングで使うというのは、どうも気が乗りません。もちろん、ショップマニュアルには「ロックタイトで固める」などと記されているはずもなく、ハンマーで打ち込むよう手順が指示されています。

 とりあえずは乏しい英語力とWeb翻訳を駆使し、ニンゲンカンケイを崩さないようI'd appreciateなんて言い回しで、やんわりと「代替品の送付」を求めてみましたが、取り寄せてから1年以上経つ部品なので、どうなることやら。まあ、最悪はスリーブ打って使えばいいか。


 それにしても…、ここ最近ツイていないように思うのは、気のせい?

2009年9月14日月曜日

リアディスク化へ 10

 しばらく作業が停滞していたリアブレーキのディスク化ですが、キャリパーの固定位置を確認するため、端材から仮のブラケットを切り出してみました。

 ご存じの通り、三菱ジープのリアアクスルはセミフロート方式ですので、単純にアクスルエンドのフランジにブラケットを抱えさせることができません。正攻法で製作するのであれば、以前のエントリーでも記したように、リテーナとキャリパーブラケットを一体構造にする必要があるのです。実際、図面を起こして検証してみたのですが、どうしても加工が複雑になってしまう(=コストが掛かる)ため、より簡素化した構造に変更できないか再検討していた…というのが、これまでの経緯。

 その後、使用するローターのオフセットやキャリパーとの組み合わせを考慮しつつ、リアハブまわりの形状と寸法を確認した結果、変則的な手法ながらブラケットの構造を大幅に簡略化する目処がつきました。そこで、ひとまずは仮のブラケットを切り出し、キャリパーのマッチングを確認することにした訳です。

 使用予定のローターはまだ入手していないため、手元にあった別車種用のローターを、仮に合わせてみました。ローターの外径やハブへの固定方法は、使用予定のローターとは異なりますが、キャリパーとの位置関係に問題ないことが、確認できました。また、キャリパーの取付角度は現物合わせで決めたのですが、10時半の位置に固定することで、コイルスプリングとの干渉が避けられることも、現物で確認しました。
 
 図面を微修正すれば、ほぼ設計は完了。ローターやハブベアリングなどの材料を揃えた上で、製作を依頼するとしましょう。

2009年9月12日土曜日

バカンスは最長5週間

 …なんでも、フランスでは法で定められているそうです。

 そして懇意にしている担当者は、今その権利を行使している最中のようで、ベルハウジングの件についても返信がありません…。

 もちろん、会社全体の機能が停止している訳ではないので、メーカーの窓口には連絡つくはずですが、こちとら急いでいる訳ではないので、ここはMr.ジルの休暇明けまで待つことにしましょう。「フランス人はバカンスのために生きている」と揶揄されるくらいですから、携帯に直電するのも野暮というものでしょう。


2009年9月11日金曜日

プジョー・BA7/4型T/M

 A3のトランスミッションは、エンジンと同じくプジョーから供給を受けたもので、型式名・BA7型。このトランスミッションは、プジョー最後のFRモデル・505に採用されていたものです。

 BA7型は、2リッタークラスの乗用車を想定した、ライトデューティーなトランスミッションです。分割式のケース構造や結合ボルトの少なさを見ても、剛性面で優れているとは言えず、ロックピン式のシンクロメッシュを採用していることからも、旧世代のトランスミッションという印象を受けます。それもそのはず、BA7型は505だけでなく、その先代の504から使われ続けているトランスミッションなので、60年代に基本設計されたものなのです。
 このBA7型トランスミッションの美点をあえて挙げるなら、整備性と部品の入手性に優れていることでしょうか。分割式ケース構造の利点で、15分もあればケースとギアトレーンを分解することができ、しかも特殊な工具は一切必要ありません。また、オイルシールはすべて規格品であるため、メーカー純正品ではなく汎用のオイルシールを使用できます。補修部品も世界的に見れば入手は容易で、504や505は本国での生産終了後も、極々最近までアフリカや中国で生産されていましたから、当面部品の供給に問題はないでしょう。

 ちなみに、一時期のジープYJに使用されていた「プジョーミッション」ことBA10型は、BA7型の兄弟機にあたります。極少数生産された2.1リッターディーゼルモデルのA3には、BA7型に代わり、BA10型のトランスミッションが設定されていましたので、ベルハウジングの取付互換性はあるのかも知れません。

2009年9月10日木曜日

切断砥石とケガキ

 モノ作り系クルマ趣味人にとって、ディスクグラインダー(サンダー)は切った貼ったの作業に欠かせないツールのひとつです。ディスクグラインダーと溶接機があれば、ブラケットのような細かい作り物だけでなく、例えばアクスルのビルドアップといった大作業もこなせますので、費用対効果を考えると、究極の“SST”といえるかも知れません。

 日立製のディスクグラインダーとともに、当方が愛用しているのは、レジボン製の切断砥石・スーパーカットRSC。それも、最も薄い1mmタイプを指名買いしています。このスーパーカットRSC、砥石の材質と薄さの相乗効果により、切断速度が極めて速いのが特徴で、若干高価ではあるものの、業界定番の「金の卵」を上回っているように感じます。もちろん1mm厚の砥石ですので、無理な力を加えたりワークに食い込ませてしまうと、割れてしまうこともありますが、正しく構えて作業すれば、破損をかなり防ぐことができるはずです。
 
 1mm厚の砥石を愛用しているもうひとつの理由は、正確に切断できることにあります。切り始めで手元が狂わなければ、0.5mm単位の切断精度を保つことも、決して不可能ではありません。ただしそのためには、ちょっとしたケガキの工夫が必要です。
 ワークのケガキというと、マジックで描いたり、あるいはケガキ針やハイトゲージを使って行うのが一般的だと思います。しかし、いずれもディスクグラインダーで切断する際の視認性は今ひとつで、ともすると手元が狂う原因にもなります。
 そこで私は、ケガキ線に沿って色付のマスキングテープを貼り、それを基準線にして切断しています。たったこれだけの工夫ですが、基準線が明確になるだけで加工精度は飛躍的に向上しますので、ひとたび慣れてしまうと、もはやマスキングテープなしに作業することなど、考えられなくなってしまいます。
 ヘビーユーザーの方は、皆様独自のノウハウをお持ちだと思いますが、未だマジックで描いた線に沿って砥石を這わせている方は、一度お試しあれ。

2009年9月9日水曜日

made in Russia

 インド製のドライブシャフトの「貧質」について書きながら、ふと思い出したのが、VAZ-2121(Lada Niva)用のブレーキパッド。部品庫を探してみると…、見つかりました。使うアテは全くないのですが、「渡露の思い出」として保管しておいたのです。捨てずに。

 このニーバ用のブレーキパッドは、2003年夏にサハリンに出かけた際、現地の部品屋で1枚200円(当時の邦貨換算)で買い求めた、いわゆる社外品です。
 1台分800円という値段もさることながら、驚くべきはそのクオリティです。ベースのスチールプレート部が明らかに再利用品で、それも過去数度使い回しされたと思しき「貼替品」なのです。それがマトモなものなら問題はないのでしょうが、プレートの厚さは4枚すべて異なっていて、強度に不安を感じるほど薄いものも混じっています。
 そして極めつけは、腐食によってボロボロになったプレートを再使用した1枚のパッド。まるで軽石に摩擦材を貼り付けたような仕上がりには、言葉を失ってしまいます。ちなみに現物は、写真で見るより数段酷く、「質感」が伝わらないのが「残念」です。

 果たして実際に使えるのかは甚だ疑問ですが、ニーバの片引き3ピストンのキャリパーなら、こんなパッドでも押せるのでしょうか?

2009年9月8日火曜日

made in India

 補修部品といえばメーカー純正品のことを指す我が国(日本車)とは対照的に、海外では社外メーカー製の補修部品が広く流通しており、「パターンパーツ」とも呼ばれています。メーカー純正の補修部品に比べ廉価な「パターンパーツ」ですが、純正部品納入メーカーがパッケージだけ変えて販売しているものから、中国やインドあたりで製造した、いわゆるコピー品まであり、その品質は「玉石混淆」。そして今回は、運悪く「石」に当たってしまったというオハナシです。

 A3に使用するCJ7のフロントアクスルのオーバーホールにあたり、パターンパーツのドライブシャフトを発注したところ、届いたシャフトのパッケージには「made in India」の文字が…。マヒンドラ繋がりでインド製なのでしょうが、どことなく「胸騒ぎ」がしたので各部を確認すると、案の定? クロスジョイントのCクリップ(スナップリング)が、ゴムシール部に刺さっているのを発見…。そのままではベアリングレースが抜けてしまいますし、どのみちシールが破れてしまっているので、組み直さないことには使用できません。
 しょうがないので、クロスジョイントを交換しようとしたところ、どうもオカシイ。U字型をしたヨークの内側にCクリップを組み込む構造なのですが、それがどうやっても入りません。ベアリングレースを軽くプレスで押しながら試みるも、全く入る気配がないのです。

 これはもしや…と思い、ヨークの寸法(アゴ内寸)をノギスで測定してみると、驚くことに規定値よりおよそ1mmも狭く、これではCクリップが入らないのも当然です。むろん、製造時にも気づいたはずですが、無理矢理ゴムシールにCクリップを刺して、何食わぬ顔で出荷してしまうあたり、昔のカレーのCMではありませんが、「インド人『に』びっくり」です。
 それはともあれ、改めてこのドライブシャフトを観察すると、左右対称であるべきはずのヨークが、芯が出ているのか不安になるほど偏った形状になっています。内寸の加工ミスと併せて、もはや「笑う」しかありません。


 今はただただ、「マトモ」な代替品が届くことを、祈るばかりです。

2009年9月5日土曜日

そんなことより現実は…

 怪しいクラック状の「ス」が見つかったベルハウジングの交換用として、昨年メーカーから大枚 €218 叩いて取り寄せておいた、ベルハウジング。その後、なかなかミッションを降ろそうという気にならず、今日まで保管していたのですが、いよいよ日の目を見る時が訪れました。

 のはずが…。
 
 レリーズベアリングがスライドするベアリングガイド(メンドラに被さるように固定されている筒状の部品)を、新しいベルハウジングに移し替え、圧入しようしたところ、なぜか緩いのです。部品で取ったベルハウジングのセンターボアをノギスで測定してみると、古いベルハウジングより直径にして0.3mm大きく、これでは圧入できないどころかガタついてしまうのも当然です。考えられるのは、ベアリングガイドが設計変更されたか、あるいは(前夜深酒した)職人さんがベルハウジングを削り過ぎたかの、いずれかでしょう。
 ミッション、ファーを組み直し、ベルハウジングを交換して「サクッ」と車体に戻すつもりでいたので、「想定外」の事態に拍子抜けしてしまいました。センターボアが規定値より小さいのであれば、追加工で対処できたのですけれど…。

 いつものメーカーのお偉いさんに、e-mailで状況を伝えましたが、珍しく2日経っても返信がありません。これはもしかして、ちょっと遅めのバカンス中デスカ?

2009年9月4日金曜日

「餅」の絵を描いてみる

 A3のトランスファ(AUVERLAND A80型)のHi/Lo比は約2倍。Lo-1速の総減速比は40倍ですので、排気量を考えるとローレンジの減速比を大きくしたいというのが本音です。

 しかしながら、A3の「ローギアードキット」なるものは、残念ながら本国にも存在しません。よってローギアード化するには、トランスファのギアを製作するか、あるいはトランスファを換装するしかないのです。もっともトランスファを換装するといっても、ミッションと一体結合構造ですから一筋縄でいくはずもなく、「ギアを製作する方が“現実的”」というのが、自らの中で下した結論です。
 クルマがクルマですから量産効果も期待できず、果たしてどれほどのコストで製作できるのか未知数な現状では「絵に描いた餅」に過ぎませんが、ギアトレーンの構造を把握しないことには「絵」すら描けません。そこで今回、トランスファを分解してみたという訳です。

 過去オーバーホールした際に、教科書通りの3軸式構造であることは把握していたので、今回の目的は歯数のカウントと、ケース内のクリアランスの測定でした。結論からいえば、現状のギアモジュールを維持し、カウンターギアとアウトプットギアだけ製作するに留めた場合、クリアランスの制約から、3倍減速が限界だと分かりました。そして、3倍以上の大減速を求めるのであれば、3軸すべてのギアを製作する必要がある、ということも。このあたり、ジムニーのローギアードキットの「違い」と同じで、当然コストは跳ね上がってしまいます。

 排気量を考えると総減速比で80倍程度、つまりトランスファレシオで4倍程度の減速を期待したいので、目指すところはトランスファ内の「ギア総入替」ということになります。果たしていつ実行に移せるのかは分かりませんが、まずは「500円玉貯金」でも始めようかと、思い巡らす今日この頃です。

2009年9月3日木曜日

ファクトリーメイドのFF可能トランスファ

 以前渡仏した際に、オーバーランド(パナール)社を訪問し、従業員の方の“プライベートマシン(A3Fベース)”に試乗させて頂きました。そのA3Fは外観こそ冴えない(失礼!)ものの、「ファクトリーワーカー」の特権を生かした加工が各所に施されており、実に素晴らしい仕上がりでした。

 感心したもののひとつが、「FF」も選択できるように加工されていた、トランスファです。フロントアウトプット側に本来備わるハウジング(駆動断続のためのドグクラッチを内蔵)を、リアアウトプット側にも追加することで「FF化」しているのですが、言うは易し行うは難し。今回、分解したトランスファを改めて観察してみて、「FF化」するにはアウトプットシャフトの加工も不可欠であると分かり、氏が「加工は大変だった」と語っていた理由が、実感できた次第です。(写真は「FF化」のために、リアアウトプット部に追加されたハウジング。フロントアウトプット側に本来備わるハウジングの転用ですが、溶接痕からも苦労が偲ばれます。)

 自らのA3のトランスファを分解するにあたり、実はこの「FF」加工にも少し「興味」を持っていました。しかし事前に予想していた通り、リアアウトプット部にドグクラッチを追加すると、トランスファの全長が伸びてしまい、クロスメンバーと干渉してしまいます。従業員の方のA3Fは、エンジン・ミッション・トランスファの固定位置を、車両前方に移動(恐らく50mm程度)することで干渉を避けているようですが、当方のA3ではエンジンの直前にウインチをマウントしていることもあり、パワーユニットは移動できません。よって、「FF」加工も諦めることにしました。
 もちろん、どうしても「FF」加工するのであれば、クロスメンバーの位置や形状を変更すれば、解決はできるでしょう。ただ、なまじ「FF」加工ができてしまうと、またしてもクルマの完成が遅れることは必至ですので、今回ばかりは悪あがきせず「できなくて良かった」と思うことにしています。

2009年9月2日水曜日

2L加工

 ジムニーあたりと同じように、四輪駆動状態でないとローレンジにシフトできないA3ですが、トランスファを分解したついでに「2L加工」し、二輪駆動(後輪駆動)状態でもローレンジを選択できるようにしました。

 といってもA3のトランスファ(Auverland A80型)は2本レバーを採用しているため、1本レバーのジムニーの「2L」化のような、複雑な加工は必要ありません。2本のレバーは本来、独立してシフトできる構造であるものを、並行する2本のシフトフォークシャフト(左図「27」「28」)の間に2個のチェックボール(左図「25」)を追加することで、「2L」にシフトできないよう、意図的に規制しています。つまりこのチェックボールを抜き取るだけで、2本のレバーが独立してシフトできるようになり、「2L」へのシフトも可能になるという訳です。
 チェックボールを取り去るためには、シフトフォークシャフトを一度抜き取る必要があり、そのためにはシフトフォークとシャフトを分離しなくてはなりませんが、基本構造さえ把握していれば作業は容易です。また、トランスファの構造そのものも整備性に配慮されており、ギアトレーンのスラスト方向のベアリングプレロード(シム)調整も、すべて本体のケースを割らずに行えるようになっています。

2009年9月1日火曜日

トヨタ シールパッキン・ブラック

 ベアリングやオイルシール、ワイヤーハーネス(電線)などと共に、日本製にこだわっているもののひとつが、液体ガスケットです。

 すべての製品を比較した訳ではありませんが、米パーマテックス社の製品(ウルトラブルー等)に比べると、トヨタ シールパッキン・ブラックは、シール性・耐久性の両面で格段に優れていることが「実感」できる、汎用タイプの液体ガスケットです。優れたシール性の裏返しで、密着したケーシングを分解する際に、なかなか剥がれず苦労することもありますが、整備業者さんの間で「デファクトスタンダード」となっているのも納得で、悪い話を聞いたことがありません。唯一の欠点は高価なことで、使い切らないうちに硬化してしまうと「ガッカリ」しますが、信頼性を買うと思えば、あながち割高とは言い切れません。

 A3のトランスミッションはエンジンオイル、トランスファはエンジンオイル(暖地ではギアオイル)が指定されていることもあり、今回はすべて「シールパッキン・ブラック」を使用して組み上げました。トランスミッションには本来「シールパッキン1281」(ベンガラ色)が指定されていますが、これは耐ギアオイル性能に重点を置いたものです。
 もっとも実際の現場では汎用タイプの「シールパッキン・ブラック」しか使っていない工場も多いようで、それだけ信頼が寄せられていることの証かも知れません。