2010年1月27日水曜日

ジムニーJB23パーフェクトメンテナンス(仮称)

 最近、プライベートな作業がやや停滞気味ということもありまして、現在手掛けている仕事について、触れてみようかと。

 というのも、昨年末よりジムニー(JB23)のメンテナンスブックの制作に、制作責任者として携わっています。実はこの企画、私自身が数年前より温めていたもので、この夏「キュリアス」誌の版元でもある(株)カマド(http://www.k-m-d.co.jp/)より出版する運びとなりました。
 メンテナンス系の出版物というと、比較的容易な内容でお茶を濁し、ヘビーユーザーにはもの足らないものとなりがちです。整備知識を持った制作者がおらず、しかも短期間で制作するとなると、そのような内容になってしまうのも無理はないのですが、そんなモノを新たに作ったところで二番煎じに過ぎず、何より私自身が納得できません。

 ということで今回の企画では、JB23をホワイトボディの状態まで分解し、フロア裏まで全塗装。機関系はエンジンからデフに至るまでフルオーバーホールし、そのすべての作業過程を誌面に盛り込む前提で、取材を進めています。それもこれも、版元の(株)カマドの基幹事業が自動車鈑金整備業(全国屈指の規模)であるからこそ可能となったもので、およそ半年という長期にわたる取材と併せて、通常は成し得ないものでしょう。

 先に本weblogで取り上げたコーナーウェイトゲージも、実はこのプロジェクトを見据えて導入したものです。ホワイトボディや、ラダーフレーム単体の重量はどれほどなのか? 個人的な好奇心もあって、完全分解しながら各コンポーネントの単体重量を、計測していくつもりでいます。

 宣伝チックになってきたついでに、もうひとつ。このメンテナンスブックと連動する形で、4×4マガジン誌の3月号からジムニー・JB23に関する連載をスタートしていますので、ご笑覧頂ければ幸いです。

2010年1月21日木曜日

トヨタな配管

 A3の水回り配管の取り回しは、スマートなものではありません。というのも、横置きを前提として基本設計されたプジョー製エンジンを、A3では縦置きで搭載しているため、配管側で辻褄を合わせざるを得ないからです。

 最もスペース的に厳しいのは、アッパーホースの取り回しです。バルクヘッド際のエンジン後端にアッパーホースを接続しなくてはならず、しかも容量の大きなサージタンクの隙間を潜らせるように、配管する必要があるのです。
 エルボホースをいくつもジョイントで接続して使うというのは、あまり好みではないので、理想に近い曲がりを持つホースを探したところ、またしてもイプサムのアッパーホースがメガヒット。なぜかA3とイプサムのアッパーホースは相性が抜群のようで、これで使うこと3本目。しかもトヨタ車の消耗部品は他メーカーに比べるとリーズナブルで、このホースも1本1300円程度と例外でなく、とても助かります。

 ラジエータ側ホース(これも同じイプサム用)との接続には、長さ300mm程のパイプが必要になります。何か良いものがないかと、在庫のガラクタを探してみたら、MR2(SW20)のクーラントパイプが出てきました。
 ミッドシップレイアウトのMR2は、車体前方にラジエータを置く都合上、水回りの配管にパイプを多用しています。そしてMR2のエンジンは、イプサムとも同じ3S系。3S系の水回り配管の口径は、A3と同じ32mmだと把握していたので、MR2の解体車からパイプを確保しておいたのが、日の目を見た訳です。
 このパイプは、錆が発生していないことや磁性を有することから、SUS430製だと思われます。端部には抜け止めのビートもあるので、そこを残し溶接で切り詰めると、希望通りの寸法が得られました。

2010年1月18日月曜日

等速ジョイントの潤滑

 オイルの極限性能が問われるようなクルマとは縁遠い当方ですが、ケミカルブランドであるWAKO'Sの製品は、いくつか指名買いしているものがあります。具体的には、エアゾールタイプのスレッドコンパウンドやリチウムグリース、そして「赤グリース」などを愛用していますが、先日仕事で使ってみたのが、以前より噂を耳にしていた「バーフィールドグリース」です。

 オンロードのサーキットカーなどで、等速ジョイントのトラブルが頻発している場合に使用すると、明らかに寿命が延びるというウワサの、このグリース。競技車両用とすることで、耐久性(経年劣化という意)を犠牲にしてまで潤滑性能を高めたとメーカーが謳うグリースは、果たしてどれだけ違うものなのか、確かめてみたかったのです。
 1kg¥8,500の缶を恐る恐る開封し、ヘラですくい上げた瞬間、違いがハッキリと分かりました。まるで納豆のようにグリースが糸を引き、納豆をかき混ぜた箸の如くヘラを空中でかき回すようにしないと、グリースの「糸」が切れないのです。潤滑性能や極圧性能の違いは、目視で分かるものではありませんが、この付着性の高さは尋常ではありません。
 走行中、ドライブシャフトは高速回転しているが故、等速ジョイント内部に押し込まれたグリースは、遠心力によって周囲に飛散しがちです。その対策として、付着性の高い専用グリースを設定しているのでしょう。四輪駆動車でのドライブシャフトの破損は、多くの場合瞬間的な衝撃による破断ですので、あまり効果は期待できないでしょうが、等速ジョイント室が疲労損壊するようなトラブルは、このグリースを使用することで「緩和」できるかも知れません。

 ちなみに当方、等速ジョイントをオイルで潤滑している英国車にも乗っていますが、オイル潤滑方式のナックルには、常々疑問を感じています。確かに、潤滑性能だけを考えるのなら「理想」のようにも思えますが、現実はスイベル部のオイルシールの耐久性が低く、気密性を継続的に確保するには構造的な限界があるといわざるを得ません。そして、オイルが失われた時のリスクの大きさ(等速ジョイント破損)をも考えると、一般的なグリース潤滑式に勝るメリットがあるとは、とても思えないのです。ディフェンダーの等速ジョイントが後年、グリース潤滑に改められたのも、賢明な判断といえるでしょう。

2010年1月12日火曜日

リモートクラッチ 2

 製作途中となっていた、ウインチの「リモートクラッチ」ですが、細かい部分を仕上げ、完成させました。

 フリーとロックの位置決めを正確に行うため、WARN純正品と同様、シャフトにノッチを設けることにしました。
 手持ちの端材の山をひっくり返してみると、ちょうど良いサイズのSUS304のパイプがありましたので、ロッドに被せるようにして装着。2本のパイプを数ミリ間隔をあけて固定することで、「溝」代わりにしようという訳です。

 この2本のパイプは位置を微調整できるように、シャフトに対してイモネジで固定。鍵穴形状に切り抜いたプレートと組み合わせることで、完全にフリーもしくはロックにした状態からでないと、切り替え操作ができないようにしました。また、走行時のガタつき防止と操作性を向上させるため、スプリングを追加しています。

 試用してみると、リンクボールの作動角の大きさが災いし、グラつき感があったので、俗にピローボールと呼ばれるタイプのロッドエンドに交換したところ、改善をみました。本来はブーツの備わるリンクボールの方が良かったのですが、さして負荷が掛かる場所ではないので、実用上の問題はないでしょう。

 操作にはある程度の力が必要ですが、ひと目で切り替え状態が分かることもあって、使い勝手は悪くなさそうです。

2010年1月11日月曜日

不可抗力

 A3のステアリングギアボックスは、ローバー(ディフェンダー)用を流用していることは以前記した通りですが、厳密には若干の加工をして使用しています。ローバーのステアリングギアボックスには、ラテラルロッドを支えるステーを固定するためのボルト穴(モールド)が設けられていますが、A3に転用する際には、そのモールドを切り落とさなくてはならないのです。

 で、イギリスから届いたパワステギアボックスに追加工する前に、とりあえず車体側に合わせてみることにしました。

 ……が、あろうことかステアリングギアボックス本体がフレームに干渉して、装着できないのです。まさかと思って何度も確認しましたが、どう足掻いても状況は変わらず。茫然自失を通り越し、もはや笑うしかありません。

 気を取り直し、フレーム側を加工したら取り付けられないかも検証してみたのですが、残念ながらそれも事実上不可能だと分かりました。最悪なことに、ステアリングギアボックスが干渉しているのがコイルアッパーブラケットのため、わずか15mmとはいえ、切り落とす訳にもいきません。逆に、干渉を避けるためステアリングギアボックスの固定位置を移動したとしても、今度はサスペンションアームとピットマンアームが干渉してしまいますし、そもそもステアリングギアボックスの固定位置を現状から移動すること自体、構造上不可能に近いのです(強度低下を無視すれば可能でしょうが、そんなリスクは背負いたくありません)。これを「八方塞がり」というのでしょう。

 もはや装着は諦めざるを得ない状況ですが、装着できない本質的な原因が分からないことには、夜も眠れません。
 パーツリストを手掛かりに調べてみて分かったのは、ディフェンダー用のパワステギアボックスそのものは、A3に設定されている「オーバーランド純正部品」と、間違いなく同一であるということ。パーツリスト上では適合するパワステギアボックスであるにも関わらず、装着できない理由。それは私のA3がパワステ設定のない時代の「極初期型」であること以外に、考えられません。

 推測するに、A3にパワステが追加設定された際(1989年頃)、ステアリングギアボックスの固定位置が設計変更され、車体前方に約15mm移動されたようです。それを裏付けるかのように、サスペンションアーム(フロントAアーム)が設計変更されており、ピットマンアームとの干渉を避ける形状となっています。このサスペンションアームの形状変更は、生産性向上を目的としたものだと思っていましたが、実際にはパワステ設定に伴うものでもあった訳です。

 そのような変更があったなら、パーツリスト上に明示されて然るべきですが、悲しいかな少量生産車ではそれも期待できず。 授業料として割り切るにはあまりに高価に過ぎますが、今回の一件は「不可抗力」なのだと、諦めるしかありません。手元に残ってしまったパワステギアボックスは…、床の間にでも飾りましょうか。

2010年1月6日水曜日

送料の内外価格差

 今回、イギリスからパワステギアボックスを買うのにあたり、真っ先に調べたのが送料のこと。何せ20kg近い荷物になるため、送料が馬鹿にならないからです。
 で、結論から言うと、今回はこちらからFedExを指定し、発送を依頼してみました。

 FedExというと、「早くて確実な代わりに料金が高い」というイメージがあります。確かに、イギリスのFedExのサイトから見積ってみると、「International Economy(約5日)」で£179.56ですから、邦貨換算¥26,500。悪名高きParcelforce(イギリスの郵便)のトラッキング付のサービスでも£152.99するので、紛失等のリスクを含めて考えると不当に高くはないものの、決して安いとはいえない金額です。
 もっともこれは、あくまで「定価」でのハナシ。「ココは安いよ」と聞いていた、イギリスの国際送料比較サイト“Parcel2Go.com” で価格を調べてみると、上記のFedExが£95.89! (¥14,200)というディスカウントプライスに。約3日で配達されるWorld Express Serviceでも£108.92でしたから、結構なダンピング率です。という訳で、このサイトを通じてFedExに集荷依頼を掛けてもらいました。

 それはそうと、時を同じくしてフランスの知人から、グランドビターラ(エスクード)の部品について問い合わせをもらったついでに、逆に日本から海外へと荷物を発送する場合の送料を調べてみることにしました。
 “Parcel2Go.com”はイギリスのサイトのため、日本からの出荷に対応していないのはやむを得ないとしても(とはいえ中国あたりは対応しているのですが…)、驚くのはFedExの「内外価格差」。日本のFedExのサイトで、イギリスまで同一条件で見積もってみたところ、「International Economy」が¥43,703也。FedExUkサイト経由でイギリスから発送した場合の1.6倍、Parcel2Go.com経由でイギリスから発送した場合の3倍以上の金額なのです。
 郵便のEMSですら¥25,300と「相場全体」が割高な日本では、競合が少ないこともあって、強気な(=足もとを見た)価格設定としているのでしょうか。もちろん、円高の為替を差し引いて考えなくてはならない部分もあるでしょうが、いかんせん同一事業者なのですから、この送料の「内外価格差」は、ちょっと度を越しているように思えてなりません。

追記>イギリスで出荷されてから59時間(2日半)で、荷物が到着しました。お礼を兼ねてイギリス人に、「ユーロスター(←昨今トラブル続き)でフランスに行くより早いと思うよ」とメールしましたが、このスピードを考えると17kgで£95.89の送料は、割安に感じられます。

2010年1月5日火曜日

パワステ化の下準備

 一時期のランドローバー/ディフェンダー用を転用していることが分かった、A3のステアリングギアボックス。追々リビルドもしくは中古のステアリングギアボックスを手配し、パワステ化しようと考えていたのですが、幸か不幸か格安な出物があったので、押さえることになってしまいました。

 この年式のランドローバー/ディフェンダーは、日本国内にはほとんど輸入されていないため、中古部品についても国内調達は限りなく不可能です。また、仮に中古品が見つかったとしても、年式が年式ですので、リビルド前提と考えなければなりません。
 そこで、中古の格安物件をイギリスで探していたところ、未使用のリビルド品(日本語が変ですが「購入後装着しないで保管していた、リビルドメーカー品」という意)を持っているイギリス人と交渉が成立。彼の地のリビルドというと、若干クオリティに不安があるのですが、日本までの送料を含めても、現地リビルド品相場(コアチャージ含)と同等もしくはそれ以下の金額に収まりましたので、まあ良しとしましょう。

 パワステギアボックスが届くまでの間に、配管についても少し調べてみました。ギアボックス本体と同様、ホースについても純正部品としてメーカーから買うことはできるのですが、送料や送金手数料等を考えると、できれば日本国内で調達したいところ。そこで、汎用油圧ホースの口金と、ローバーのパワステギアボックスの油圧ポート双方の規格を確認してみると、ちょうど良さそうな変換アダプターが存在することが分かりました。
 AN規格であれば、AeroquipやEarl's等にもパワステ用ホースやフィッティングがラインナップされていますが、信頼性を考え今回は国内の油圧ホース屋さんで製作してもらう予定です。